2011年6月30日木曜日

教育費

 青山学院幼稚園に子どもを裏口入学させられると嘘をいい,保護者から多額の金銭をだまし取った容疑者が逮捕されたそうです。少子化が進んだ現在でも,まだこういうことがはびこっているのですね。
http://www.asahi.com/national/update/0629/TKY201106290253.html

 さて,青山学院といえば,幼稚園から大学までの一貫教育で有名です。貧乏性の私としては,この学院の幼稚園に子どもを入れ,大学まで出すとなったら,莫大なお金がかかるだろうなあ,と案じてしまいます。わが国では,子ども一人育てるのに1千万かかるとか2千万かかるとかいわれますけれども,公的な統計を使って計算すると,どういう数字が出てくるでしょうか。

 文科省の『子どもの学習費調査』では,保護者が子どもに費やした教育費(本調査の用語では学習費)の額が明らかにされています。ここでいう教育費には,学校教育費(授業料,通学費…),学校給食費,および学校外教育費(学習塾費,地域活動費…)が含まれます。

 最新の2008年度調査によると,同年度間に保護者が費やした教育費の平均は,公立小学校の4年生の場合,約29万円です。しかし,中学校3年生になると56万円ほどに上がります。子どもが私立校に通っている場合,この額はうんと高くなることはいうまでもありません。

 私は,こうした学年ごとの統計をつなぎ合わせて,子ども一人を育て上げるのに必要な教育費の総額を試算しました。なお,上記の文科省調査は,高等学校段階までしか調査していません。大学については,日本学生支援機構の『学生生活調査』で明らかにされている学費のデータを使います。学費とは,「授業料,その他の学校納付金」および「修学費,課外活動費,通学費」から構成されます。大学の学費は学年ごとに明らかにされていないので,1~4年とも,一律に全体の平均額を適用します。ここで用いる統計は,以下のサイトで閲覧できます。
文科省:http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/1268091.htm
日本学生支援機構:http://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_chosa/data08.html

 幼稚園から大学まですべて公立(大学は国立)という「親孝行?コース」と,すべて私立という「親不孝?コース」を想定してみましょう。下の表をご覧ください。


 まず最下段の総額に注目すると,すべて公立(大学は国立)の場合,およそ808万円です。すべて私立に通わせた場合は,2,198万円です。後者は前者の2.7倍です。公私の差は,小学校段階で大きくなっています。どの学年でも,4~5倍も開いています。義務教育無償の原則により,公立の小学校では授業料が徴収されませんが,私立は,そうではないからです。

 表の右欄は累積を出したものですが,すべて私立のコースの場合,子どもが義務教育を終える頃にして,既に1,370万円にも達しています。すべて公立コースの額(396万円)の3.5倍です。その後,高卒時点で1,663万円,大卒時点で2,198万円に達します。

 巷でいわれていることではありますが,わが国では,家庭が負担する教育費が膨大なものであることが知られます。教育費の高さが,少子化の原因になっていることは,否定できないところです。まあ,すべて私立というコースをたどるのは,ごく一部の子どもだけでしょう。小学生に占める私立生の比率はたったの1%,100人に1人です(2010年)。

 思うのですが,小学校や中学校という早い段階らか,子どもを私立に入れようという,親御さんの心理はどういうものなのでしょうか。誰もが入れる公立にはワルガキが多いので,わが子がいじめに遭うのではないか,という心配からでしょうか。でも,6月14日の記事でみたように,いじめを容認する子どもは,公立よりも私立で多いのです。

 ところで,2010年度より実施されている高校無償化政策により,公立高校の授業料はタダになり,私立校の授業料には補助が出ることになりました。よって,上表の高等学校段階の数字は,大きく変わることでしょう。願わくは,このような措置を,もう一段階上の大学にも適用していただきたいものです。