2011年5月24日火曜日

国立大学医学部入学者

 前回は,大学入学者の現役・浪人構成の変化を調べました。今回は,最難関といわれる国立大学医学部入学者について,同じ事柄を明らかにしようと思います。

 2010年の文科省『学校基本調査(高等教育機関編)』によると,同年春の,国立大学医学部医学科への入学者は4,380人だそうです。4月26日の記事でみた,東大・京大の推定入学者(6,873人)よりも少なくなっています。同時点の18歳人口に占める比率は,0.36%です。同世代の約278人に1人です。選りすぐりの人たちです。

 この4,380人の組成を百分率で出すと,現役が43.7%,1浪が29.1%,2浪が10.7%,3浪以上(多浪)が15.8%,その他が0.7%,となります。少子化の時代ですが,国立大学医学部入学者では,未だに,浪人経由者のほうが多いのです。前回みた,大学入学者全体の組成との違いが明らかです。


 国立大学医学部への入学者の変化を示すと,上図のようになります。この32年間にかけて,入学者の数はおよそ4,000人前後で一定しています。医師という専門職を,国税を使って養成する機関ですから,定員管理が厳重になされていることがうかがわれます(蛇足:大学院博士課程についても,このように定員管理をしっかりしようという発想はないのかしらん…)。

 それだけに,入試競争は熾烈をきわめるようであり,どの時期でも,入学者の多くが浪人経由者です。3浪以上の多浪生も,常に,1~2割を占めています。国立大学医学部入学者の特性は,ベースの規模をそろえた組成図でみると,もっとはっきりします(下図)。大学入学者全体の組成との違いが,一目瞭然です。


 普通の家庭の子どもが,医師になることを志す場合,国公立の医学部を志望せざるを得ないでしょう。私立の医学部だと,入学から卒業するまでに,何千万という,目玉が飛び出るような高額の学費を納入しなくてはなりません。私立の医学部生の9割近くが,開業医の子弟であるという調査データを,何かの本で目にした記憶があります。

 大学全入といわれますけれども,入試競争の激しさを未だに保っている部分もあるようです。このような部門として,国立の医学部の他に,どういうものが考えられるでしょうか。興味ある問題ですが,そろそろ主題を変えようと思います。