2011年4月11日月曜日

中学生のいじめ容認率

 いじめは,現代の子どもの問題行動の最たるものですが,その量的規模を把握するのは非常に困難です。文科省『児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』にて,2009年度間に公立学校で認知されたいじめの件数(児童生徒1,000人あたり)を県別にみると,最も多いのは熊本県の30.1件です。

 しかし,この数字は,当県がいじめの摘発に本腰を入れたという名誉の数字と読むべきでしょう。いじめの発生頻度を計測するにあたっては,文科省の認知件数の統計は使えません。いじめとは外部から見えにくいものである以上,当事者の意識をフィルターにするのが妥当であると思います。

 文科省が毎年実施している『全国学力・学習状況調査』では,いじめに対する意識を問うています。「いじめは,どんな理由があっても絶対にいけないことだと思いますか」という設問に対し,「あてはまる」,「どちらかといえば当てはまる」,「どちらかといえば当てはまらない」,「当てはまらない」,のいずれかで答えてもらうものです。ここでは,後2者の回答をした者の比率を,いじめ容認率とみなしましょう。

 2010年度調査の公立中学校3年生の結果でいうと,この意味での「いじめ容認率」は8.7%です。47都道府県別にみると,最高は京都の11.8%,最低は鹿児島の4.9%となっています。この両県では,いじめを容認する生徒の比率に倍以上の差があります。

 
 47都道府県の値を地図化すると,上記のようになります。10%を超える県は黒く塗っていますが,首都圏や近畿圏の都市的な地域がほとんどです。赤色の準高率地域も,宮城,愛知,兵庫など,都市的な県が多くなっています。予想されることではありますが,いじめは,都市的な環境と結びついているようです。

 願わくは,このような大雑把な知見だけではなく,いじめの発生基盤に関するより具体的な知見を得たいところです。学校規模との関連,新任教師の比率との関連,塾通いをしている生徒の比率との関連…やってみたい作業はいろいろあります。

 ですが,こうした分析は,都道府県という大きな地域単位のデータでやってもあまり意味はありません。市町村別,学校別といった,細かい集団単位でのデータでなされる必要があるでしょう。

 いじめ問題の解決のためには,心の教育というような道徳教育も大切ですが,いじめを誘発する環境要因についても解明されねばなりません。政策によって動かしやすいのは,後者のほうなのですから。文科省の『全国学力・学習状況調査』のデータを仔細に分析すれば,相当のことが分かると思います。私のような人間でも,申請すれば,より細かなデータを使わせてもらえるのかしらん…

3 件のコメント:

  1. 前略 レポート作成の準備としてサーフィンしていて貴ページに辿り着き、数ページ興味深く拝読しました。現職中学校教員です。
    調査結果をこのような形でまとめて発表していただくことはとても有り難いことです。
    元データの出展、ウェブで可能ならそのアドレスまで示していただければもっと有り難いです。
    御健闘をお祈りし、取り急ぎコメント書き込みます。

    返信削除
  2. コメント有難く存じます。現職教員の方に,見ていただけて光栄です。統計の出所は,文科省『平成22年度全国学力・学習状況調査』です。下記のURLより,各都道府県の結果を閲覧することができます。いじめの設問は,生徒質問紙調査の41番です。ご確認ください。
    http://www.nier.go.jp/10chousakekkahoukoku/06todoufuken_chousakekka_shiryou.htm

    返信削除
  3. 早速URLをお教え頂き有難うございます。
    この程度の情報を教育政策研究所のデータから自力で探し出せずお煩わせしましたことを情けなく思います。

    貴サイトには、「欠食率」「自殺と失業率」「α値」「高校非進学率と貧困」「離婚」等興味深い視点がたくさん示されています。
    「欠食と学力」の関係は学校現場でも簡単に追調査し、啓発資料にできます。
    また、「高校非進学率」は、数が少ないので統計処理に馴染まないかもしれませんが、現場の立場からは「退学率」も含めて「二世率」に啓発資料としての可能性を感じるところです。

    どこかのページに書かれたことですが、色々な白書を入手し自分で計算し直していた時代に比べて、随分便利になりました。
    ごのような形でデータ処理して示していただくことはとても助かります。

    重ねて御礼申し上げます。
    有難うございました。

    返信削除