2011年1月30日日曜日

少年の窃盗犯

 少年の非行といっても,さまざまな罪種があります。最も多いのは窃盗犯で,これだけで全体のおよそ6割を占めます。今回は,10代少年のうち,窃盗で御用となった者がどれほどいるかをみてみようと思います。

 警察庁『平成21年の犯罪』によると,2009年中に窃盗で検挙・補導された10~19歳の少年は65,712人です(用語ですが,14歳に満たない触法少年が警察に捕まった場合は「補導」といいます)。この年の10代人口は1,202.8万人です。よって,前者を後者で除して窃盗犯出現率は5.5‰となります。百分率にすると,0.55%です。ピークであった1985年の9.9‰に比せば,かなり減ってきています。


 ところで,少年といってもさまざまな年齢を含んでいます。1歳刻みで窃盗犯出現率を出し,その時代変化をみてみましょう。例の社会地図の登場です。これによると,1980年代の年少少年(14~15歳)の部分に,17.5‰を超える高率ゾーンが見出されます。

 私よりも少し上の世代ですが,確かに,怖い先輩の話はよく聞かされました。今に比べれば,この頃の少年のほうが悪かったなあ,という印象も持っています。しかし,それだけではありますまい。犯罪や非行の原因は,逸脱主体の側の原因と,統制機関の側の原因に大別されますが,後者についても目配りする必要があります。

 たとえば,セルフサービス店に,私服警備員を多く配置するなど,統制を強化すれば,万引きのような窃盗犯は自ずと多く捕まることでしょう。網を多くかければ,魚が多く獲れるのと同じです。

 1980年代の前半は,少年非行戦後第3のピークなどと騒がれ,警察が少年の取り締まりにやっきになっていた時期です。網を多く張るものだから,少年が多く捕まる。少年がたくさん捕まる事態を憂いて,さらに統制が強化される。するとさらに多くの少年が御用となる…この循環です。

 非行統計を読む際は,相応の注意が求められます。