2011年1月18日火曜日

せんせいのお給料

 物価に地域差があるのと同様,就労者の給与水準にも,相当の地域差があります。大学生がコンビニでバイトするにしても,東京なら時給800~900円というのが相場なのでしょうが,私の出身の鹿児島だと,700円というのがざらです。600円台というケースも聞いたことがあります。バイトだけでなく,就労者全体の平均給与水準でみても,かなりの差があるとみてよいでしょう。

 ところで,給与水準に地域格差が出ないよう,政策的なテコ入れがなされている人たちがいます。それは,公立の義務教育学校の先生たちです。公立の義務教育学校とは,市町村立の小・中学校(特別支援学校小・中学部,中等教育学校前期課程含む)のことです。

 これらの学校の先生の給与は,学校の設置主体の市町村ではなく,都道府県と国が負担することとされています。負担割合は,2:1です。財政格差が大きい市町村に負担を委ねると,教員の給与に著しい地域格差が生じ,ひいては,義務教育の質の地域格差につながります。このことは,憲法が規定する義務教育の根幹(機会均等,水準確保,無償性)を揺るがすことにもなるでしょう。よって,このような均衡措置がとられているわけです。こうした制度のことを,義務教育費国庫負担制度といいます。

 公立小学校の男性教員と,男性の一般労働者の平均給与月額の都道府県差をみてみましょう。前者は,2007年のもので,文科省『平成19年版・学校教員統計調査』から得ました。後者は,2008年のもので,総務省『社会生活統計指標2010』から得ました。


 上図は,全国平均,および47都道府県中の最大値と最小値を示したものです。差の規模に注目してください。最大値と最小値の開きは,一般労働者の給与のほうがはるかに大きくなっています。一般労働者の場合,東京と沖縄では17万円も違います。しかし,公立小学校教員では,両極の差が5万円にとどまっています。

 上記の事実の結果,学校教員の給与と一般労働者の給与の差が大きくなっている県もあります。最も大きいのは,秋田です。当県では,公立小学校の男性教員の給与月額は39.4万円ですが,一般労働者の給与月額は28.7万円です。よって,前者は後者の1.37倍にもなります。一方,東京では,前者が37.7万円,後者が43.9万円と,教員給与のほうが低くなっています。


 この給与倍率を47都道府県について出し,値に基づいて,地図上で色分けすると,上図のようになります。倍率の全国平均は1.04倍ですが,1.2倍を超える県が18県,1.3倍を超える県が6県あります。

 これらの県の「せんせい」はウハウハでいいなあ,という見方もできます。逆に,高給取りと世間から揶揄され,人に比べて高い金もらってんだからもっと働け!と有形無形の圧力を被っているのではないか,というマイナスの見方もできます。上記の給与倍率によって,教員の勤務実態がどう異なるのかを,回を改めて明らかにしようと思います。