2011年1月10日月曜日

東京の高校階層構造

 あまり大っぴらに言えたことではありませんが,わが国の高校には,暗黙のランクのようなものがあります。私の頃などは,進学校,普通校,底辺校といった言葉が,中学校の進路指導の教師の口からぽんぽん飛び出ていましたが,今はどうなのでしょう。

 一般に,高校ランクというのは,有名大学への進学可能性に依拠したものといえます。有名大学合格率に基づいて,各高校を層化した図のことを,高校階層構造といいます。今回は,2010年春の有名大学合格者出現率の統計を用いて,東京都内437高校の高校階層構造を描いてみようと思います。

 こうした作業に何の意味があるかと問われるならば,2つのことを述べることができます。その1は,公正にかかわるものです。昨年の12月26日の記事と関連することですが,有名大学への合格者を多数輩出する上位校が,(多額の学費を要する)私立高校に寡占されるというような構造になっているとしたら,それはいかがなものか,という問題が提起されます。

 その2は,各県の政策評価に関するものです。高校階層構造の形状は,各県の高校教育政策と関連している側面を持っています。たとえば,公立高校の学区制で大学区制をとる場合,高校格差が大きくなり,上層が細く,下層が分厚い,鋭利なピラミッド型ができるといわれます。反対に,かつての京都府のように,小学区制を採用するならば,各高校が比較的均質になり,極端な進学校や底辺校が少ない,中層が太った構造になると考えられます。高校階層構造の形状を明らかにすることで,各県の高校教育政策の在り方を考える道筋が見えてきます。

 私は,サンデー毎日特別増刊号『完全版・高校の実力』(2010年6月12日)の資料から,2010年春における,都内437高校の有名大学合格者数を知りました。有名大学とは,東大,京大,東工大,一橋大,お茶の水女子大,東京外大,早稲田大,慶応大,国際基督教大,上智大,そしてMARCHの5大学を合わせた15大学です。これらの大学の合格者数を,各高校の卒業生数で除して,合格者出現率を計算しました。437高校の平均値は,30.8%でした。しかし最も高い高校だと,262.5%にもなりました。合格者数は延べ数ですので,卒業生の数を超えることもあり得ます。

 続いて,この合格者出現率に依拠して,各高校を11の階層に割り振りました。A層(90%以上),B層(80%台),C層(70%台)…,H層(20%台),I層(10%台),J層(0.1%以上10%未満),K層(0%=合格者なし),です。これらの各層に含まれる高校の数を図示すると,以下のようになります。これが,いわゆる高校階層構造です。


 基本的には,下層部が厚く,上層部が薄い,ピラミッド型になっています。しかし,最上層(A層)の比重も結構あるので,上下に分極した分極型ともいえそうです。

 さて,上記の2つの観点に照らして,図を眺めてみましょう。まず,A層の高校58校のうち,39校(67%)が私立校であることが注目されます。437高校全体で,私立校が占めるシェア(55%)を凌駕しています。東京の場合,上位校は私立校に偏しているといってよいでしょう。

 次に,都の高校学区政策との関連についてです。東京都は,2003年度より,公立高校の通学区を撤廃しています。その後,高校格差が大きくなったといわれます。上記の図で,公立校の部分だけに注目すると,なるほど,上が細く,下が分厚い,ピラミッド型ができています。A層に含まれる公立校は15校ですが,ここには,都教委が進学重点校に指定している7校が位置しています。上記の形状は,少ない高校に資源を重点投資する,都教委の政策による部分もあるかと思います。

 この点を検証するには,学区撤廃前の統計を使って,同じ図を描き,比較してみる必要があります。機会があれば,やってみたいと思っています。また,他県についても,高校階層構造を描く作業をしてみようと思います。

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