2017年5月22日月曜日

あなたの世帯の貯蓄額はどの辺りか?

 先行き不透明な時代にあるためか,せっせと貯蓄に励む世帯が増えていると聞きます。

 20歳そこそこの学生に「俺らの頃は,年金もらえるんでしょうか?」と真顔で訊かれ,「今からそんなこと考えるな」とたしなめたことがありますが,社会人になった彼も,お給料の一部は貯金しているのでしょう。

 私はというと,収入は少ないですが,貯蓄は結構あるほうかなと思います。意識して貯め込んでいるわけではないですが,濫費をしないので自ずと貯まる。洋服なんてここ5年くらい買ってませんし,レジャーにしても週に1回(平日),電車に乗って近場に繰り出すくらいです。人付き合いをしないので,交際費もゼロ。

 これは私の主観ですが,同年代の貯蓄額分布の中で自分はどの辺りかを知りたくなりました。2013年の『国民生活基礎調査』のデータをもとに,世帯主が40代の世帯の貯蓄額分布をとると以下のようになります。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html


 貯蓄額が分かる1393世帯の分布ですが,貯蓄ゼロの世帯が最も多くなっています。多くが単身世帯でしょう。その次は,500~700万円の階級となっています。

 なるほど,自分の位置が分かりました。他の年代はどうかも知りたいですが,上記のような細かい階級の分布を逐一とるのは煩雑です。そこで,簡易な四分位値を求めることにしましょう。

 全体を4つに等分する値で,Q1(25%値=75位),Q2(50%値=50位),Q4(75%値=25位)の3つです。Q2は,いわゆる中央値に相当します。

 右端の累積相対度数をみると,Q1は50~100万円,Q2は300~400万円,Q3は700~1000万円の階級に含まれることが分かります。按分比例の考えを使って,それぞれに該当する値を見積もってみましょう。

 Q1 (25.0-22.8)/(27.8-22.8)=0.438
    50.0万円+(50.0万円×0.438)=71.9万円
 Q2 (50.0-45.5)/(53.1-45.5)=0.590
    300.0万円+(100.0万円×0.590)=359.0万円
 Q3 (75.0-70.1)/(78.0-70.1)=0.622
    700.0万円+(300.0万円×0.622)=886.5万円

 世帯主が40代の世帯を貯蓄額が高いほうから並べたとき,Q3(25位)は886.5万円,Q2(50位=真ん中)は359.0万円,Q1(75位)は71.9万円,となるようです。

 貯蓄が886.5万円以上ある世帯は上位25%に入っていて,71.9万円に満たない世帯は下位25%未満であると。

 この四分位値は,個々の世帯の貯蓄額がどの辺りかを判別する目安になります。世帯主の年齢層別に,Q1~Q3の値を出してみました。また,男女の単身世帯だけを取り出した場合,どういう値になるかも計算してみました。下表は,その一覧です。


 どうでしょう。私は40代の男性単身世帯(赤色)ですが,Q1が19.6万円,Q2が277.3万円,Q3が971.9万円となっています。Q2とQ3の落差が大きいですねえ。一部の世帯がガッツリ貯め込んでいるってことです。私は,この2点の間です。

 世帯主が60代の総世帯でみると,Q2が667.2万円,Q3が2067.4万円です。退職して間もない年代で,退職金がガッポリ口座に入っているためでしょうが,くれぐれも振り込め詐欺などにはご注意を。

 上記の表は,あなたの世帯の貯蓄額が全体のどの辺りかを判別するのに使えます。その気になれば5分位値,10分位値なども出せますが,今回はラフな四分位値ということで…。

 個人の年収についても,こういう診断表を作るといいかもしれませんね。按分比をとる階級が層によって違うので計算に手間がかかるのですが,調査統計法の作業課題として,学生さんに分担させるのもいいのでは。これぞ,アクティブ・ラーニング! 高校でも,比を教える単元の題材としてもってこいでしょう。

2017年5月19日金曜日

パチンコ実施率の変化

 多くの人が何らかの趣味や娯楽を持っていますが,どういうものが好んでされるかは,時代と共に変わっているでしょう。

 総務省『社会生活基本調査』で,いろいろな趣味・娯楽の実施率の変化をとってみたのですが,過去20年間の変化が最もドラスティックなのはパチンコです。

 1991年と2011年の年齢層別の実施率がどう変わったかをグラフにすると,以下のようになります。調査実施時期から遡って1年間の間にパチンコをしたという人の割合です。


 20~40代の低下がスゴイですね。20代前半では,37.8%から12.9%と,3分の1近くに減っています。若者の「パチンコ離れ」とはよく言ったものです。

 その要因については,1)スマホゲームなどの普及,2)自由に使えるお金の減少,3)自由時間の減少,といったことがいわれています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kodamakatsuya/20160512-00057599/

 なるほど。若者の給料は減ってますからねえ。前回みたところによると,20代前半の正社員の年収中央値は250万円弱です。沖縄に至っては185万円。正社員でこれです。非正規も含めたら,もっと少なくなります。

 おカネだけでなく,自由に使える時間(ゆとり)も減っているでしょう。昨今の人手不足もあって,ピチピチの若年労働者は馬車馬のようにこき使われていますから。

 20代前半には学生も多く含まれますが,彼らとて,昨今の締め付けにより大学等の出席管理も厳しくなっています。私の頃は,大学をサボって1日中パチンコに入り浸る猛者もいましたが,最近はそういう学生も減っているでしょうねえ。学生に「君たちはパチンコとかしないの?」と訊いたことがありますが,「そんなのするヒマないっすよ」と返されたのを覚えています。ああ,学費稼ぎの長時間バイトも増えているんでしたね。
http://tmaita77.blogspot.jp/2017/05/blog-post_7.html

 60歳以上の高齢層は,これら3つのファクターと無縁なためか,パチンコの実施率はこの20年間でさほど変わっていません。65歳以上では,若干増えてもいます。しかるに実施率が高いのは若者ですので,この層が離れていくのは,業界にとってかなり痛手でしょう。

 なお,パチンコの実施率には地域差もあります。25~34歳のパチンコ実施率を都道府県別に計算し,4つの階級で塗り分けたマップにしてみました。以下に掲げるのは,1991年と2011年のマップです。


 全国的に地図の模様が薄くなっています。1991年ではほとんどの県が3割以上でしたが,2011年では2割未満の県が大半です。全国的に,若者の「パチンコ離れ」が進行していることが知られます。

 まあ,若者の「**離れ」というのは,ほとんどが「おカネの若者離れ」に起因しているのも否めません。声高には言えませんが,カネがなければ趣味や娯楽もそうできません。

 ある方がツイッターで,「高齢者にカネをばらまくより,消費意欲旺盛な若者にお金を渡したほうが,景気がよくなっていいんじゃないか」という趣旨のことを言われてましたが,そんな気もします。前回みたところによると,20代前半の若者の年収中央値はたった250万円ほど。これでは生活に精一杯で,遊びにカネを回すのは難しい。

 2016年に実施された『社会生活基本調査』のデータが間もなく公開されると思いますが,実施率の年齢カーブはもっと下に下がり,地図もさらに薄くなっていることでしょう。社会の変化といえばそれまでですが,経済的逼迫,時間的ゆとりの減少によって,若者のせっかくの消費性向が抑えつけられている。パチンコ実施率の変化から,こういうことも見て取る必要があるでしょう。
 
 2011年の若者のパチンコ実施率の県別一覧表は,昨日ツイッターで発信しました。リンクを貼っておきます。興味ある方はどうぞ。傾向としては,他の娯楽が多い都市部では低いようです。沖縄が低いのはなぜなのか…。
https://twitter.com/tmaita77/status/865171236774592512

2017年5月14日日曜日

20代前半の正社員の年収中央値

 沖縄が本土に復帰したのは1972年。今年で復帰45年になるわけですが,様々な面で本土との格差が大きいのはよく知られています。

 復帰45年という節目を迎えるにあたって,沖縄タイムスが行った調査によると,本土との格差を感じている県民が多し。どういう面の格差を問題視するかは世代差があり,年輩層は基地問題ですが,若年層は「所得」の格差を一番の問題と挙げているそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170513-00097113-okinawat-oki

 沖縄の所得水準が低いのはよく知られていますが,若年層に限るとそれはいっそう際立つでしょう。正社員でも平均年収が200万いかないと聞きますが,本当でしょうか。

 昨日,2012年の『就業構造基本調査』から,20代前半の正規職員の平均年収を都道府県別に計算してみました。その結果によると沖縄は190.5万円で,確かに200万円を下っています。全国的な感覚でいうと,いわゆる「ワーキング・プア」に入るレベルです。

 全国値は255.5万円,マックスの東京は280.6万円。なるほど,本土との開きは凄まじいものがあります。沖縄の若者が,本土との所得格差を問題視するのは当然といえましょう。

 このデータは,昨日ツイッターで発信しましたが,見てくださる方が多いようです。しかるに,平均値ではなく中央値で見たほうがいいのではないか,というご意見を多くいただいています。

 平均値と中央値。どちらもデータの傾向を端的に表す代表値ですが,平均値は一部の極端な値に引きずられる難点があります。年収の平均値(average)は,一部のスタープレイヤーによって釣り上げられている可能性が大です。

 そこで,データを高い順に並べたとき,ちょうど真ん中の中央値(median)で見たほうがよい,というご指摘ですが,ごもっともです。ではご要望にお応えし,20代前半正社員の年収の中央値を都道府県別に出してみましょう。

 『就業構造基本調査』には,年収の度数分布表が掲載されています。全国の20代前半正規職員のそれは以下のようになっています。年収が判明する218万6500人の分布です。本調査でいう年収とは,税金等が引かれる前の税込年収であり,手取り年収ではありません。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm


 200万円台前半が3割と,最も多くなっています。大学を卒業したばかりの年齢層ですから,こんなものでしょうか。

 この分布から,年収の平均値ではなく中央値を求めたいのですが,ちょうど真ん中に来る年収額はいくらでしょうか。右端の累積相対度数から,200~249万のどこかということは分かります。

 按分比例を考えを使って,ちょうど真ん中(累積相対度数=50%ジャスト)の値を見積もってみましょう。以下の2ステップです。
https://twitter.com/yjtmr/status/863739727102394369

 ① (50.0-22.6)/(53.3-22.6) = 0.892
 ② 200.0万円+(50.0万円×0.892) = 244.6万円

 全国の20代前半の正社員219万人を,年収が高い順に並べた場合,ちょうど真ん中に来る人の年収は244.6万円と推測されます。平均値(255.5万円)よりも低いですね。上述のように,平均値は一部のスターによって釣り上げられているためです。

 同じやり方にて,47都道府県別の年収中央値を出してみました。高い順に並べたランキング表を掲げます。


 どの県も,昨日ツイッターで発信した平均値より低くなっています。問題の沖縄はというと185.9万円,月収にすると15.5万円です。これは税込み額ですので,各種の保険を引かれた手取り年収はもっと少ないことになります。これはキツイ。物価の安さを勘案してもです。

 しかし沖縄だけでなく,全国的に低いですねえ。正社員でこれです。就職しても親元に居座り続けるパラサイト・シングルが増えているといいますが,致し方ないような気がします。若者の自立困難の原因を,「甘え」というような彼らのメンタリティに帰すのは間違いでしょう。実家を出て,一人暮らしするのも容易ではない。

 しからば,どういうことになるか。分かり切っているのは,未婚化の進行です。それと,新世帯を構えるのに必要な家電品の消費も冷え込むことから,景気も悪くなります。ある人がツイッターで言っていましたが,消費意欲旺盛な若者の給与を上げたら,さぞ景気は上向きになるのではないでしょうか。タンスにしまい込むだけの老人にお金を渡すより,ずっとプラスになるような気も…。

 若者を冷遇するのは,社会にとってもマイナスです。給与のテコ入れは難しいでしょうが,さしあたり,若者を対象とした,公営借家の供給増や家賃補助等の住宅支援を強化すべきでしょう。支出の大きな部分を占める住居費にテコ入れする。これだけでも,事態はかなり変わろうというものです。

 私はこれまで,若者の貧困の可視化として平均年収ばかりを出してきましたが,中央値もいいですね。ツイッターで意見を下さった方に,感謝申します。

2017年5月12日金曜日

結婚の損失の国際比較

 未婚化の原因には諸説がありますが,最近,次のようなことがよく言われるようになっています。「結婚すると稼げなくなるので,女性は結婚を躊躇う」と。

 女性の大学進学率が上がり,身に付けた知識や技術を活かしてガシガシ稼ぎたい,大学までの学費の元を取りたい…。こういう女性が増えていることを思うと,さもありなんです。

 結婚となると,自分が稼げなくなる分,相手の男性は稼げる人でないと困る。よって女性は男性に高い年収を求めざるを得ないのですが,このご時世,若い男性でそういう人は滅多にいない。ゆえに,条件のミスマッチから未婚化が進行する。声高には言われませんが,こういう事態になっているとも思われます。

 はて,これは他国でも同じなのでしょうか。最新のISSP国際調査(2014年)の個票データを使って,生産年齢の有業女性(in paid work)の収入を未婚者と有配偶者に分けて計算し,その差がどう違うかを国ごとに比べてみました。
http://www.issp.org/data-download/by-year/

 以下に掲げるのは,日本のデータです。日本は,年収を調査しています。


 ありがたいことに,各階級の階級値の統計表を得ることができます。150万円は100万円台,250万円は200万台…です。

 分布をみるとやはり未婚者のほうが稼いでいます。有業者といっても,夫がいる有配偶女性の場合,多くがパート・アルバイトといった非正規でしょう。

 上記の分布から平均値(average)を計算すると,未婚者が284.3万円,有配偶者が210.2万円です。どちらも絶対額が少ないことはさておき,未婚者のほうが高くなっています。その差は1.35倍なり。

 これは日本の未婚者と有配偶者の比較ですが,他国はどうなんでしょう。私は,主要7か国について上記の同じ統計表を作成し,それをもとに両群の平均収入を算出しました。日本とアメリカは平均年収,その他は平均月収です。


 どの国も,自由度の高い未婚女性のほうが稼いでいるかと思いきや,そうではありません。それに該当するのは日本とドイツだけで,残りの5か国は有配偶者のほうが稼いでいます。

 海外では,あまり稼ぎ過ぎると損をする「**円の壁」のようなものがないのでしょうか。従業地位の違い? 他国では,未婚女性より既婚女性のフルタイム(正社員)率が高い? それは考えにくいような…。

 ただ,結婚して子どもがいる女性でもバリバリ働ける条件が日本より整っているというのは,よく言われますよね。スウェーデンでは,保育所入所を希望する親に枠を用意するのは自治体の義務です。

 ①年齢をもっと狭く限定すべし,②子の有無を考慮すべし,③従業地位をフルタイムに統制すべし…。いろいろ難点のあるラフなデータですが,ISSP調査はサンプルが少ないので,細かい条件の統制は叶いません。

 日本の状況が普遍的でない可能性がある。一つの試算結果として,ここに載せておくことにしましょう。

2017年5月9日火曜日

貧困と高校生のバイト率の相関

 『国勢調査』の労働力状態の統計を使って,生徒・学生のアルバイト率を出せることを知りました。計算式は以下です。

 バイト率=通学のかたわら仕事/(通学のかたわら仕事+通学)

 何からの学校に通学している生徒・学生のうち,通学のかたわらで仕事(バイト)をしている者が何%かです。前回みたところによると,15~24歳の生徒・学生のバイト率は,データがとれる1980年以降の推移でみて,過去最高です。学生の生活困窮化の表れと思われます。

 今回は,地域別のデータをみてみようと思います。都道府県別は,都市県で高く地方県で低い構造は分かり切っていますので,飛ばしましょう。ここでは,東京都内23区の15~17歳の生徒のバイト率を計算してみます。高校生のバイト率です。

 仮説は,所得水準の低い区ほど高校生のバイト率が高い,というものです。

 2008年のリーマンショック以降,学費稼ぎのバイトに明け暮れる高校生の存在がメディアでクローズアップされ,2010年に公立高校の授業料が無償になりました。現在では,一定の所得以下の家庭の生徒に対し,就学支援金が支給される制度になっています。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/index.htm

 全日制高校の場合は月額9900円で,私立校にあっては,家庭の所得水準に応じて最大2.5倍まで増額されます。よく考えられた制度ですが,貧困とバイトの結びつきを解消するに至っているのかどうか。

 15~17歳の生徒(以下,高校生)のバイト率を,都内の23区別に出してみましょう。下記サイトの表1から。計算に使う数値を採取しました。ピンクの「DB」というボタンを押して,必要な変数だけを使ったクロス表を自分で作れます。便利なものです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001085798&cycleCode=0&requestSender=search

 念のため申し添えますが,これは居住地に基づく統計であって,学校の所在地に基づくものではありません。


 同じ大都市のデータですが,高校生のバイト率は,最低の0.9%(千代田区)から最高の5.5%(足立区)までの幅があります。

 赤字は4%超の区ですが,墨田区,江東区,大田区,足立区,葛飾区,江戸川区が該当。23区の地図が頭に入っている人ならピンとくるでしょうが,明らかに地域性があります。

 上記の各区のバイト率を地図に落としてみましょう,4つの階級を設けて,23区を塗り分けてみました。


 東が軒並み濃い色に染まっており,中心部や西部は真っ白。都内23区を上から俯瞰してみると,高校生のバイト率には,ある傾向をもった地域差がありそうです。

 その傾向は,所得水準との相関です。2013年の『住宅土地統計』のデータを使って,23区の平均世帯年収を出したことがありますが(下記リンク先),この経済力指標との相関図を描くと下図のようになります。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/03/214.html


 明瞭なマイナスの相関です。相関係数は-0.74にもなります。平均年収が低い区ほど,高校生のバイト率が高い傾向にあります。

 当然といえばそうですが,家庭の貧困とバイトの結びつきのマクロ的な表れといえましょう。高校就学支援機制度がしかれている現在でも,こういう現実がある。都内23区という局所の地域単位のデータですが,この点は知っておくべきでしょう。

 今度の『国勢調査』は2020年に実施されますが,そのころには,上記のような明瞭な相関関係はなくなっているかどうか。それでもって,高校就学支援機制度の効果も測られるでしょう。

 私は前に,都内の地域別に中卒者の高校非進学率を出したことがあります。2010年施行の高校無償化政策の効果があったのか,2009年と2012年を比較すると,多くの地域で高校非進学率は減じ,各地域の所得とのマイナスの相関も消えていました。
http://tmaita77.blogspot.jp/2013/08/blog-post_11.html

 ここで明らかになってしまったような,所得とバイト率の負の相関は果たしてどうなるか。別にバイトが悪いとはいいませんが,家庭の事情によって,高校生のうちから過重なバイトに絡めとられ,学校での勉強もままならない生徒がいるとしたら,法律が定める「教育の機会均等」原則に抵触します。

 そのような生徒が,社会階層構造内でどう分布しているか。個人単位のデータで明らかにするのも重要な課題でしょう。

2017年5月7日日曜日

生徒・学生のバイト率の時系列変化

 学生の生活困窮化がいわれていますが,全国大学生協や東京私大教連の調査データから,下宿学生の仕送り額や1日あたりの生活費の減少を知ることができます。
http://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html
http://tfpu.or.jp/kakeihutan-chousa/

 東京私大教連の最新データによると,首都圏の私大下宿学生の1日あたりの生活費は850円だそうです。*計算式=(仕送り月額-家賃月額)/30日

 私は,大学院以降はずっと授業料免除をもらっていましたが,申請書類に「月の食費2万5000円」と書いたら,担当職員に「これじゃ通らんぞ。食費が高すぎだ」と言われたことがあります。

 1日あたりにすると833円ですが,上記の850円という数値と照らしわせると,1日の生活費が消えちゃう計算になりますね。なるほど,この職員の発言はまんざら的外れではなかったわけです。

 当然,これでは生活が成り立たないのでバイトする学生も増えていることでしょう。学業に支障のない範囲ならいいですが,近年の人手不足もあって,度の過ぎたブラックバイトに絡めとられてしまう学生も多し。

 さて,学生のバイト率はデータでみて,過去からどう推移しているのでしょう。上記のメジャーな調査では,この点は明らかにされていません。私の頃も,90年代後半の不況期で,バイトしている学生が多かったですが,今はそれ以上なのかしら。

 学生のバイト率の時系列推移を知れる,信頼のおけるデータがないかと前から思っていたのですが,基幹統計の『国勢調査』から,それを捻り出せることを知りました。「灯台下暗し」ですね。

 この調査は,国民の労働力状態を調べています。先日,この部分を集計した,2015年の第2次集計結果が公表されました。大学入学年齢の19歳人口は約119万5千人ですが,労働力状態の内訳は以下のようになっています。


 労働力人口の就業者の中に①「通学のかたわら仕事」,非労働力人口の中に②「通学」というカテゴリーがあります。この2つを足しわせた数(①+②)が学生ということになりますが,この中で①が何%かをとれば,学生のバイト率ということになるでしょう。

 上表から,2015年の19歳の学生のバイト率を出すと,189,690/(189,690+586,501)= 24.4% となります。大学等の高等教育機関の1年生ですが,4人に1人がバイトしているようです。

 1980(昭和55)年では,同じやり方で出した19歳学生のバイト率は9.7%でした。この35年間で,19歳学生のバイト率が2.5倍ほどに増えています。

 これは19歳ですが,他の年齢はどうでしょう。この2時点の間のデータも気になります。私が大学に入った年(1995年)はどうだったのかな。15~24歳の各年齢のバイト率の推移を,5年間隔でたどると下表のようになります。

 15~18歳は高校生も含みますので,「生徒・学生」ということにしましょう。


 表をざっと見て,どの年齢でも学生のバイト率が増えていることが知られます。黄色マークは観察期間中の最高値ですが,18~21歳の大学生の年齢帯は,直近の2015年がマックスとなっています。

 「俺らの頃の方がバイトしてたよ」という年長者の声を聞きますが,バイト実施率のデータを見るとそうではないようです。飛躍な言い回しですが,学生の生活苦は「空前」のものといえるかもしれません。

 赤字は25%(4分の1)を超える数値ですが,2005年以降,20代前半の大半がこの色で染まっています。大学生の生活苦の進行の表れではないでしょうか。遊びのカネ目当てのバイトだろう,という意見もあるでしょうが,学生のバイト目的が学費・生活費稼ぎにシフトしていることは,前に明らかにした通りです。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/05/blog-post.html

 先述のように,最近はサービス業界の人手不足も相まって,学生が無茶なブラックバイトに絡めとられてしまう条件が出てきています。学生の側も,「親には頼れない,おカネが稼げるなら」と,それを受け入れてしまう。いつしか,勉学とバイトの主従関係が反転し,形式的就学が蔓延ってしまう。大学進学率50%超のユニバーサル段階に達した,日本の高等教育には,こういう病理が潜んでいることを見抜かないといけません。

 これを治療する術は,学生への経済的支援の強化と,ブラックバイトの取り締まりの2つから成ります。前者は,給付型奨学金が創設され一歩前進といったところですが,まだまだ不十分。奨学金を貸し付けるだけではなく,学費減免の枠も増やすべきでしょう。

 後者については,最近の大学では,新入生へのガイダンスにおいて,「ブラックバイトに注意」という啓発をしているようですが,これをもっともっと徹底すべきです。身を守るための労働法規の授業を必修にしてもよいでしょう。

 学生さんの側も,自分で積極的に情報を集めて,「知的武装」を図ることが大切。ちょっと勉強すれば,「辞めたら損害賠償だ!」なんていう脅しにも屈しなくなります。いろいろ本も出ていますが,さっきのぞいた大学生協のHPでも,いい資料が載せてあります。
http://www.univcoop.or.jp/fresh/life/parttime/index.html

 5月になりましたが,「5月病」を患うことなく,有意義な学生生活を送って下さいますよう。

2017年5月6日土曜日

エアポケット?

 4月1日の記事でお知らせしたように,編集者のズボラさに愛想を尽かし,プレジデント・オンラインの連載は休止しています。中止になる可能性も大です。
http://tmaita77.blogspot.jp/2017/04/blog-post.html

 おかげで心の平穏が得られています。言い回しがよくないですが,ブラックバイトを辞めることができた学生の気分です。

 この会社には,だいぶ前から嫌な思いをさせられているのですが,昨年の11月に,ここの編集長を新百合ヶ丘に呼び出して文句を言いました。私が約束にうるさい人間であることを聞かされたのか,20分以上前から指定の場所で待っていました。

 担当編集者のだらしなさを糾弾すると,こんなことを言いました。「いやあ,中だるみはあるんですよ。いわゆるエアポケットです」。

 エアポケット? 何ですか,それ。業界用語ですか。コトバンクで調べると,「飛行中の航空機が急激に下降する空域」とあります。なるほどねえ。件の編集者は,このエアポケットに入ったから,いろいろポチミスをやらかしたと。

 しかしねえ,編集長さん。お言葉ですが,お宅の編集者は年中低空飛行で,「下降」する余地なんてないと私は思いますけど。言い換えると,年中「下降」しっぱなしです。

 部署の長として,反省の言葉の一つでも出てくるかと思いきや,こんなエクスキューズをされたことに,残念な思いがします。やはり,件の編集者個人の問題ではなく,組織全体の問題かもしれませんねえ。

 上記の告発記事は,おそらくそちらの会社で話題になっていることでしょう。当該の編集者を,ちゃんと叱ってくださいましたか? タイトルの無断改竄という非行も含めてね。

 そちらは紙雑誌の編集体制は超一級なんですから,ネットもそれに近づけてほしいなと思います。いい加減,エアポケットから抜け出してください。