2017年2月27日月曜日

妻のほうが働いている夫婦の割合

 前回は,15歳生徒に父母の就業状態を尋ねた結果をもとに,夫婦の馬力の国際比較をしました。双方ともフルタイム就業をしている夫婦の割合は,日本は33.7%で,64か国中42位です。

 「夫フル+妻パート」ないしは「夫フル+妻主婦」というように,夫のほうが働いている夫婦がマジョリティですが,少数ながらその反対のタイプもいます。のほうが働いているタイプです。今回は,こういう「非伝統的」な夫婦がどれほど存在するかを,国ごとに比べてみようと思います。

 前回と同じく,OECD「PISA 2012」のデータを用います。この調査では,対象の15歳生徒に対し,父母の就業状態を問うています。選択肢は,①フルタイム就業,②パートタイム就業,③失業,④主婦(夫)の4つです。③と④は「無業」と括りましょう。

 この場合,各生徒の父母の就業タイプは,3 × 3 = 9タイプに分けられます。日本の15歳生徒のうち,父母両方の就業状態をきちんと答えたのは5,701人。この5,701人の父母の就業タイプの内訳を%で示すと,下表のようになります。

 海を隔てた大国・アメリカとの比較もしましょう。アメリカの%の母数は4,533人です。このデータは,上記調査のローデータを独自に加工して作成したものであることを申し添えます。


 日本では「夫フル+妻パート」の夫婦が38.0%で最も多くなっていますが,アメリカでは双方ともフルタイムの夫婦が最多です(47.7%)。全体の半分近くが,二馬力夫婦であると。

 ここでの関心事は,妻のほうが働いている「非伝統的」夫婦の割合ですが,黄色マークのセルの夫婦が該当します。日本は全体の3.1%,アメリカは13.2%なり。

 違うものですねえ。日本では31組に1組ですが,アメリカでは8組に1組の出現率です。15歳生徒の父母といったら,私と同じ40代前半くらいでしょうか。働き盛りの夫婦の稼ぎは,夫がメインで妻はサブ。それはどの国も同じですけど,そのレベルにはグラデーションがあることが伺われます。

 他の国についても,上表の黄色マークの夫婦,妻のほうが働いている「非伝統的」夫婦の割合を計算してみましょう。64か国の数値を高い順に並べたランキングにすると,下表のようになります。


 上位には,旧共産圏の社会が並んでいます。トップはブルガリアで16.0%,6組に1組の出現率。先ほどサシで比較したアメリカは8位となっています。

 日本はというと,下から2番目です。周りは,宗教的な理由で女性があまり外に出ないイスラーム社会ばっか。日本の女性の社会進出度は,イスラーム諸国と同レベル(それ以下)であることの可視化にもなっています。

 日本は,伝統的夫婦の呪縛が強い社会と性格づけられるのだなあ。しかるに,それに拘っていると,あまりいいことはなさそうです。リンダ・グラットン教授が『ライフ・シフト-100年時代の人生戦略-』で指摘されているように,人生の各段階において,主な稼ぎ手が柔軟にチェンジできるようになることが望ましい。

 働き始めて10年ほど経ったら,主な稼ぎ手を妻にチェンジして,夫はその間にスキルアップを図る。変動の激しい時代では,絶えず「学び直し」が求められますが,その機会を得ることにもつながるでしょう。要は,役割を硬直的に固定してしまわないことです。

 これから先は,こういう柔軟な夫婦の役割設計(戦略)が求められるのですが,日本がそれから最も隔たっていることが,データで分かってしまいました。

 何度も言いますが,自国の常識が世界で普遍的などと思うなかれ。国際比較によって,目を外に開くことが,社会の変革を支持するエビデンスを得ることになるのです。

2017年2月25日土曜日

夫婦の馬力の国際比較

 現在は,夫婦「二馬力」が求められる時代。随所で言われていますが,男性の腕一本で家族を養える時代など,とうに終わっています。社会の側にしても,労働力が減少する中,これまで家庭の中に籠っていた女性の就労を促すのが急務となっています。

 先日,面白いツイートをみかけました。フルタイム就業=1.0点,パート就業=0.5点とした場合の,夫婦の点数分布の国際比較図です。夫婦ともフルタイムの場合は2.0点ですが,北欧諸国はこのタイプが最も多くなっています。
https://twitter.com/Kelangdbn/status/833697234457817088

 日本のデータはないようですが,「夫フル+妻パート=1.5点」という夫婦が最多でしょうか。それとも,「夫フル+妻無業=1.0点」が最も多いでしょうか。

 上記のツイートで紹介されているのは,ヨーロッパの17か国のデータですが,もっと多くの国のデータも見たい。私は,OECDの国際学力調査「PISA 2012」のデータを加工して,それを独自に作ってみました。

 この調査では,15歳の生徒に対し,父母の従業上の地位を尋ねています。選択肢は,①フルタイム就業,②パートタイム就業,③失業,④主婦(夫),の4つです。③と④は「無業」と括りましょう。

 こうすると,各生徒の父母の就業タイプは,以下のように分けられます。15歳生徒の父母ですから,私と同じ40代前半くらいかと思われます。


 セルの数値は,夫婦の馬力の合計点です。父母ともフルタイムの場合は2.0点,「父フル+母パート」は1.5点,「父フル+母無業」は1.0点という具合です。

 日本の15歳生徒のうち,父母双方の従業地位を回答したのは5,701人となっています。さすがPISA調査。十分なサンプルサイズです。上表の枠組みに依拠して,各生徒の父母(夫婦)の馬力スコアの分布を出すと,2.0点が33.7%,1.5点が38.8%,1.0点が25.0%,0.5点が1.7%,0.0点が0.8%,となります。

 最も多いのは,1.5点ですね。先に記した通り,「夫フル+妻パート」のタイプでしょう。ごくわずかですが,「夫パート+妻フル」の夫婦もいますけど。

 では,他国はどうでしょう。下のグラフは,主要7か国の馬力スコアの分布図です。各国の15歳生徒の回答に依拠しています。


 どうでしょう。夫婦ともフル(2.0点)のシェアに注目すると,日本はドイツに次いで低くなっています。最も高いのは予想通り,北欧のスウェーデン。全体の6割が二馬力の夫婦です。

 日本とドイツ以外の国では,二馬力の夫婦が最も多くなっています。わが国といろいろな面で似ている韓国も,二馬力夫婦が42.1%で最多です。もっともこの国では,一馬力(≒夫フル+妻主婦)のタイプも多く,夫婦の就業タイプが分化しているようです。

 「PISA 2012」のデータから,もっと多くの国の分布を知ることができます。その数は64か国。全ての国ついて帯の分布図を描くのは煩雑ですので,マックスの二馬力夫婦の比率を拾うことにしましょう。

 下表は,夫婦ともフルタイムの二馬力夫婦の比率が高い順に,64の社会を並べたランキング表です。


 上位には,旧共産圏や北欧の国々が挙がっています。全体の6~7割が,夫婦ともフルタイム就業の二馬力夫婦です。旧共産圏の社会では国民皆労働の伝統が強いので,女性のフルタイム就業率が高いのでしょう。

 下位には,イスラームの国々が位置しています。女性はあまり外に出ないという,文化的(宗教的)理由によります。これらの国では,馬力スコアが0.0点,つまり夫婦とも無業というタイプも結構いるのですよねえ(トルコは全体の26.9%)。外国人労働者に任せているのでしょうか。

 日本は64か国中42位で,下から数えたほうが早いです。日本の働き盛りの夫婦の「二馬力」比率は,3分の1くらい。まだまだ,これを高める余地はありそうです。

 ちなみに,夫より妻が働いているタイプの夫婦もあります。最初の表の黄色マークのセルに該当する夫婦です。ジェンダー観念の相対化という意味で,この比率の国際比較も面白そうですね。それは,回を改めてすることにいたしましょう。

2017年2月23日木曜日

早朝の家事格差

 家事格差とは何ぞやについては,説明は要りますまい。夫と妻の家事分担が著しくバランスを欠いており,妻に負担がのしかかっている事態です。

 早朝の実施率をグラフにすると,それが怖いくらい明瞭に表れています。以下に掲げるのは,平日の朝5~7時台における,共働き夫婦の家事実施率のグラフです。15分刻みの時間帯別の実施率を折れ線でつないでいます。下記サイトの表18(平日)のデータをもとに作図しました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001040661&cycode=0


 夫の曲線は寝そべっていますが,妻は起きてきて,せっせと家事に勤しんでいます。学齢(6~17歳)の子がいる母は大変で,6時台には半分近くが家事をしています。弁当作りなどでしょう。その横で,夫はグーグー寝ている。

 上記のグラフをみて,「夫よ起きろ!」と叫びたくなるママさんも少なくないでしょう。

 まあこれは,夫婦の家事分担の不均衡という問題と同時に,手の込んだ弁当作りを求められる,というカルチャーにも因があるかと思います。

 私は,母親が病気がちだったせいもあり,高校の頃は弁当を持って行った記憶があまりありません。購買部で総菜パンを買って,自分の席でそれをパクついていたなあ。周りを見ても,そういう生徒が多かったように思います。

 フランスでは,子どもの弁当作りは手抜きOK,遠足弁当も「パンとハム」でいいのだそうです。そもそも,見栄えのいい弁当を作ろうという発想がない。大事なのは,「シンプルで食べやすいこと」。
http://toyokeizai.net/articles/-/159126

 こういう考え方も,見習いたいですねえ。共働き夫婦はますます増えてくるのだし,どうでもいい所にエネルギーを割くのはもったいない。簡素化のカルチャーを広めていきたいものです。

 その点で,日経デュアルの「手抜きレシピ」の企画は,私は大好きです。手抜き弁当なんていう企画もやってほしいなあ。

2017年2月21日火曜日

人はどの県に移るか

 地方創生の推進と相まって,「移住先に選ばれる県はどこか?」という類の記事をちらほら見かけます。ふるさと回帰支援センターの調査によると,2016年の移住希望先1位は山梨県,2位は長野県だそうです。
http://news.livedoor.com/article/detail/12700774/

 なるほど,住みよい県のランキングでも上位によく挙がる県ですので,さもありなんです。しかるに,口先の意見ではなく,実際に人がどう動いているかの統計を観察するのもいいでしょう。

 どれほど地域が人を呼び込んでいるかを測る人口移動の指標として,転入超過率がよく使われます。ある年の転入者数から転出者数を差し引いた数(転入超過数)を,当該年の初頭の人口で除した値です。

 2016年の東京の30代(日本人)を例に,この指標を計算してみましょう。同年中の転入者は9万1,512人,転出者は9万1,198人ですので,分子の転入超過数は314人となります。これを,同年1月1日の30代人口(196万5,158人)で除して,転入超過率は0.016%となる次第です。資料は,総務省『住民基本台帳人口移動報告』。
http://www.stat.go.jp/data/idou/index2.htm

 社会増によって,東京では30代人口が0.016%増えた,ということです。言わずもがな,「転入<転出」,つまり出て行っている人のほうが多い場合は,転入超過率はマイナスとなります。

 このやり方で,都道府県別・年齢層別の転入超過率を計算してみました。各ステージごとに,どの県に人が移っているかが分かります。下に掲げるのは,値が高い順に47都道府県を並べたランキング表です。


 20代は都市部で高いのは分かり切っていますので,30代以降のデータにしていますが,どうでしょう。

 トップは軒並み九州の県になっています。30代は沖縄,40代は福岡,50代は鹿児島,60歳以上の高齢層は沖縄,という具合です。

 赤色の上位5位をみても,西日本の県がほとんどです。首都の東京は,50代以降になると,入ってくる人より出ていく人のほうが多くなります。IターンやUターンによるものです。

 壮年期以降は,人は「西」に動く。こんなテーゼを立てられそうですね。若年期の人口移動の裏返しかもしれませんが,そればかりではありますまい。とくに,沖縄の実情に興味を持ちますねえ。確かこの県は,非正規雇用から正規雇用への移動チャンスが全国一じゃなかったかな。
https://twitter.com/tmaita77/status/592494430168297473

 若者の起業チャンスが「西南」に多いことは,前に明らかにしたことがあります。
http://tmaita77.blogspot.jp/2013/10/blog-post_13.html

 ライフステージごとの地域移動のデータはあまり見かけませんので,参考資料として提示しておきましょう。

2017年2月19日日曜日

知られざる事実

 スマホの所有率が低く,ネットの使用時間は短い。これが日本の青少年です。グラフを2枚,掲げておきます。

1)一つ目

2)二つ目

 日本の青少年は,世界最高のスマホジャンキーとか,ネット中毒とか言われますが,データでみるとそうではないようです。

 ただ,使い方に問題が。ネットでゲームをやる頻度は世界最高ですが,自分の創作物を発信する頻度は・・・。ネットの用途に関する国際比較データは,22日公開のニューズウィーク記事でご覧に入れましょう。

 ネットは,誰でも情報を発信・共有できる,文明の偉大な発明品です。今では,それが「掌」サイズのスマホでできちゃう。上手く使うならば,学校の教授活動の能率も飛躍的に高まります。

 マイナス面ばかりを咎め,スマホの利用を闇雲に制限するのではなく,プラスの面を認め,適切な用途で利用するよう,子どもを仕向けていきたいものです。

2017年2月16日木曜日

今日のできごと

 今日は,朝から出かけてきました。

 まず10時より東京地裁で,先日起こした裁判の初回口頭弁論に出てきました。まあ弁論といっても,裁判長より「訴状の通りでいいですね」と言われ,「はい,その通り陳述します」と答えただけです。

 初回の弁論には被告は出てこないケースが多いのですが,2名の弁護士さんが出てこられました。終わった後,法定の外で「ご挨拶を」と話しかけられ,名刺をいただきました。お二人とも若い弁護士さんです。私のような素人は,いい練習台になるかもしれませんね。謹んでお相手いたしましょう。第2回口頭弁論は,3月の下旬です。

 裁判の口頭弁論というと,口角泡を飛ばして激しく言い合うことをイメージされるかもしれませんが,実際は「お手紙合戦」です。私の訴状に対し,被告が答弁書で反論をしてくる。それに対し,私が第1準備書面で反論する。それに対し被告も,同じ第1準備書面で応戦する。後は第2,第3準備書面・・・というように,文書でやり合います。

 双方が出頭する口頭弁論では,前もって出した書面の通り陳述する,ということを言うだけです。まあ大した事件ではありませんので,第2,第3準備書面あたりで双方の主張は尽き,証拠調べの後,判決という流れになるでしょう。

 口頭弁論が終わった後,京急で久里浜まで行き,不動産屋で新居の契約をしました。来月の初頭に引っ越す予定です。

 引っ越し先は,横須賀市の南西の海岸地域です。近くに「ソレイユの丘」や「荒崎公園」といった市営公園があり,とてもいい所。海好きの私には,たまりません。引っ越し後,自転車で海沿いを走り回る日が続くと思うと,ワクワクします。健康にもいいよなあ。
https://www.seibu-la.co.jp/soleil/
https://www.cocoyoko.net/spot/arasaki-park.html

 契約を終えた後は,京急の終点の三崎口まで下り,西海岸をバスで逗子まで上りました。そして,締めはココ。江ノ電の鎌倉高校前駅を降りてすぐの海岸です。


 江の島の海の撮影スポットとしては,ここがベストじゃないかなあ。新居からここまでくるのは,結構時間がかかりますが,定期的に来たいと思います。海をみると心が広々としますよ,ホント。

 3月中旬締め切りの,ちょっと大きな仕事が2つあります。これは,引っ越し前に片付けちゃいましょう。

2017年2月12日日曜日

悲劇の確率

 まだまだ先のことや,起きてもいないことを心配して,「今」を台無しにしている人がいますが,勿体ないと思います。

 統計でみると,悲劇が起きる確率ってどれほどなんでしょうかねえ。たとえば,死ぬこと(死亡)はどうでしょう。2015年の厚労省『人口動態統計』によると,私の年齢層(40代前半)の死亡者は9770人と計上されています。2015年の1年間の死亡者数です。

 同年の10月時点の40代前半人口は,973万2218人(『国勢調査』)。よって,40代前半の人が不幸にして命を落とす確率は,996人に1人ということになります。1日あたりの死者数は,27人です(9770/365 ≒ 27)。

 同年中の40代前半の自殺者は1984人ですので,確率は4905人に1人で,1日あたり5人。40代の刑法犯被害者は13万8620人で(『犯罪統計書』),133人に1人,1日380人です。犯罪被害は結構多いですが,多くは盗みの被害です。

 これは私の年齢層のデータですが,他の年齢層の一覧を示しましょう。


 年老いてからならともかく,若い頃からいろいろ杞憂をめぐらし,「**保険だ」などと騒いでばかりというのはいただけないですね。

 しかし逆の見方をすれば,私の年齢層でも年間で996人に1人,1日27人が命を落としている。私は常道から外れた人間と思ってますが,そのような不幸は免れている。

 「生きているだけで丸儲け」
 「命に別状なければ問題なし」。

 「生」に対するありがたみを忘れないようにしたい。もっとも,上記のフレーズが,政府の怠慢を正当化することに使われてはいけません。