2017年3月27日月曜日

正社員就職率の段階比較

 職業別の求人倍率をみると,建設業,介護サービス,飲食業などの数値がべらぼうに高くなっています。一般事務などはメチャ低。希望者が多く,口が少ないため。お呼びでありません。

 社会が求めるのはグレー・ブルーカラー,学校教育で量産されるのはホワイトカラー志望者。こんな状況になっているといえましょう。

 それはさておき,こうした社会の人材需要の様は,学校卒業者の進路統計に表れています。高校よりも大学のほうが正社員就職率がいいと思われるかもしれませんが,さにあらず。高校の中でも専門高校,とりわけ工業高校などはがんばっています。

 『学校基本調査』によると,2016年春の工業高校卒業生(全日制・定時制)は8万593人。この卒業者を進学者と非進学者に分け,その下の成分を面積図で表すと以下のようになります。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528


 就職の意思のない進学者を除いた「非進学者」ベースで,正規職員として就職した生徒の比率を出すと96.1%にもなります。ほぼ全員です。建設業界の技術者や労働者への需要が著しく増しているためでしょう。

 これは工業高校のケースですが,他の専門学科も健闘しているようです。高校の学科別の正社員就職率をみていただきましょう。上記と同じく,非進学者ベースの数値です。短大,高専,大学,大学院といった高等教育機関との比較もしましょう。


 細かい学科(専攻)別の数値を出しました。90%を超える数値は赤色にしましたが,高校で多いではないですか。高校では5つ,短大では2つ,大学と大学院修士課程で1つです。

 マックスは高等専門学校(高専)の96.7%,さすがですね。5年制の高等教育機関ですが,産業界からの評価がきわめて良好であることがよく知られています。

 それに次ぐのが高校工業科で96.1%,その次が水産科の95.9%なり。農業科と福祉科もがんばっている。社会の人材需要の色が出ているといえましょう。

 大学院は,上に行くほど正規職員就職率が下がりますけど,これについてはノーコメントとしておきましょう。

 ただ社会に送り出される人材の量の上では,現在では大学学部の卒業者が最も多くなっています。それもそのはず。大学進学率が50%,つまり同世代の2人に1人が大学に行く時代ですので。

 そこで,この段階の正社員就職率を,もうちょっと仔細に解剖してみましょう。上表は専攻別ですが,これをさらに設置主体別にバラしてみます。国立・公立・私立の別です。以下の表は,「設置主体×専攻」でみた正社員就職率の一覧表です。上記と同じく,2016年春の卒業生のデータです。


 ほう。どの専攻でも公立大学の数値が最も高いですね。90%超の赤字も多くなっています。地域密着の公立大学は強いのでしょうか。量的に多い社会科学系の正社員就職率は,公立,国立,私立の順になっています。

 教育の役割は,社会が求める人材を輩出することです。教育を社会に従属させろなどとはいいませんが,現実として,社会の人材需要の色が卒業生の進路に反映されています。

 「悪さをしないで,社会の中での役割(仕事)をきっちりする人間になってほしい」。こういう思いで子育てをしている親御さんが多いでしょうが,無目的にわが子を上の学校に行かせても,あまりいいことはないように思います。

 成人年齢を20歳から18歳に引き下げる法改正が議論されていますが。18歳というステージでの自立をもっと促してもよいでしょう。「無職博士を雇ったら500万円」とかいう政策がありましたが,高卒者を採ったら奨励金なんていうのがいいのでは。

 社会の側がなすべきは,早い段階で社会に出た人間が,必要を感じた時に後から大学等の高等教育機関で学べるようにする制度を作ることです。未来形の大学の顧客は,やせ細っていく18歳人口ではなく,リカレント学生なのです。

2017年3月25日土曜日

20代の動機別自殺者数の変化

 景気回復の恩恵もあってか,ここ数年で,若者の自殺者数は減少をみています。警察庁の『自殺の概要資料』によると,2007年の20代の自殺者(a)は3309人でしたが,2016年では2235人にまで減っています。
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/jisatsu.html

 少子化の影響もあり,20代人口(b)もこの期間で1503万人から1269万人に減っていますが,自殺者数を人口で除した自殺率(b/a)も,22.0から17.6に下がっています(ベース10万人あたりの自殺者数)。

 「めでたし,めでたし」と言いたいところですが,動機別の自殺者数の変化を観察すると,近年の社会変化の影の面が見えてきます。

 警察庁の『自殺の概要資料』では,2007年より細かいカテゴリーを設けて,動機別の自殺者数を計上しています。一人の自殺者の動機が複数にわたる場合は,3つまで計上する方式です。よって数値は延べ数ということになりますが,ある動機(原因)で自ら命を断った若者の実数を知ることは可能です。

 データが得られる最も古い年次の2007年と,最新の2016年の統計を照らし合わせてみると,下表のようになります。


 最も多いのは,両年次とも「うつ病」です。次いで統合失調症,その他精神疾患といったメンタル要因が多くなっています。

 しかしここで注目したいのは,この10年間における変化です。2016年の自殺者数が50人以上で,2007年に比して自殺者が増えた項目に黄色マークをしました。マークがついているのは,親子関係の不和,就職失敗生活苦仕事の失敗,仕事疲れ,そして学業不振です。

 親子関係の不和は,進路選択などで親子間でもめる頻度が増えているのでしょうか。今の世代は時代の変化を見取り,大会社に入っても安泰でないことを知っており,いろいろな道に行こうとしますが,親からすればそれは許せない。いつの時代でもこういう世代葛藤は起きますが,激変期の現在では,それが殊に顕著なのかもしれません。

 前にニューズウィーク日本版に書きましたけど,親世代は,自分たちがたどってきた道を,子ども世代が子羊のようについてくる(これる)などと考えないほうがいいです。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2015/11/post-4092.php

 人手不足で就職市場が売り手市場になりますが,「シューカツ失敗自殺」も増えていますね。2010年頃に比したら数は減っていますが,お祈りメールを何十通も受け取り,自我を傷つけられ,将来展望に大きな不安を頂いた青年が自殺に傾きやすくなるのは道理です。私が試算したところによると,シューカツに失敗した学生の自殺率は国民全体の8倍を超えます。
http://tmaita77.blogspot.jp/2013/04/blog-post.html

 何度もいいますが,22歳で全てが決まる新卒至上主義などは,まずもって撤廃すべきでしょう。労働力不足が深刻化するなか,このシステムがいつまでも維持されるとは思いませんけれど。

 生活苦の自殺も増えています。仕事疲れの自殺も増加。どの業界も人手不足ですが,そのシワ寄せは若手にいくのが常です。2015年暮れに起きた,電通の若手女性社員の過労自殺が想起されます。

 「仕事の失敗」による自殺者は増加倍率が最も大きく,45人から78人へと1.73倍に増えています。今はどの職場も手取り足取り若手を育てるゆとりがなく,新人の失敗への寛容度が下がっているのでしょうか。

 学業不振の自殺も増えていますが,学生を締め付ける「大学の中高化」施策の影響かしらん。

 若者の自殺数,自殺率は低下の傾向にありますが,細かい動機別の統計を紐解いてみると問題がざくざく出てきます。数の上では小数ですが,黄色マークの数値は,近年のわが国の社会変化の影の側面を照らし出しているともいえるでしょう。

2017年3月24日金曜日

なぜ二次元のグラフにするか

 先日,「宿題をするのにコンピュータをどれほど使うか」という問いに対する回答の国際比較グラフをツイッターで発信したところ,多くの方に興味を持っていただきました。

 横軸に「全く or ほとんど使わない」,縦軸に「ほぼ毎日 or 毎日使う」の回答比率をとった座標上に,世界各国を配置した二次元のグラフです。
https://twitter.com/tmaita77/status/844103078437502977

 日本は圧倒的に前者が多く後者がほぼ皆無なので,右下の外れた位置にあります。日本の学校教育のICT化の遅れはよく言われますが,それが怖いくらいに可視化されているので,「おお」と思われた方が多かったのでしょう。

 一方,疑問も呈されました。「なぜ二次元の散布図にするのか。普通は棒グラフだろう」と。なるほど,もっともな疑問ですが,何でもかんでもオーソドックスな棒グラフにすればいいってものでもありません。2つの変数をグラフにするにあたっては,横軸と縦軸を使った二次元の平面上にデータを配置するのも一つの手です。

 題材を変えて,具体的な例を紹介しましょう。ISSPが2012年に実施した「家族と性役割の革新に関する調査」では,「学校に上がる前の幼子の世話は,最初に誰が見るべきと考えるか」という設問を設けています(Q12)。
http://www.issp.org/page.php?pageId=4

 5つに選択肢から1つを選んでもらう形式です。以下に掲げるのは,調査対象の38か国の回答分布です。*ドイツは調査対象が東西で分かれています。


 「家族」という回答割合の高い国が多くなっています。日本もこのタイプで,調査対象の国民の76.5%が「家族」と答えています。

 しかしこれとは異なるタイプもあり,スウェーデンでは82.5%が「政府機関」と回答しています。この国では,保育所入所を希望する家族に定員枠を用意するのは自治体の法的な義務で,日本でいう「待機児童」は存在しないそうです。毎年,全国各地で保育所落選の悲鳴が上がる日本とは大違いです。

 公的保育の考え方が,国民の意識にもはっきり表れています。フィンランド,デンマークといった他の北欧国でもそうです。

 38か国の回答をみるに,「家族」ないしは「政府機関」という回答(赤字)が大半を占めるようですが,この2つの回答比率をグラフにする場合,どうしたものでしょう。多くの人が推奨する「棒グラフ」にすると,以下のようになります。


 青色のバーが「家族」,オレンジ色のバーが「政府機関」の回答比率ですが,グチャグチャで傾向が分かりにくいです。せいぜい5か国くらいまでならこういうグラフでもいいでしょうが,38か国ものケースになるとNGです。

 私は,こういう大量ケースの2変数をグラフにするときは,横軸と縦軸を駆使した2次元のマトリクス上に,それぞれのケースを配置することにしています。

 上記の見映えの悪いグラフを,この形式に変えてみましょう。横軸に家族,縦軸に政府機関という回答比率をとった座標上に,38か国を配置します。


 どうでしょう。横軸の値が高く縦軸の値が低い「家族型保育」の社会と,その反対の「社会型保育」の社会が見出されます。斜線は均等線で,この線より上にある場合,横軸より縦軸の値が高いことを意味します。

 38か国すべての国名を書き込むことはできませんが,自分の国の位置を知りたい,2つの変数による社会のタイプ分けをしたいという時,このグラフ技法は効果を発揮すると思います。

 日本は私型保育,北欧諸国は公型保育の社会ですが,核家族率に示されるような家族構造はほとんど同じです。日本でも,家族の小規模化・核家族化は欧米並みに進行しています。にもかかわらず意識は旧態依然のまま。このギャップから,虐待や介護殺人のような家族内の悲劇が起きているといえましょう。

 話が逸れましたが,大量ケースの2変数のデータをグラフにする場合,二次元の配置図が使える,という提案をしておこうと思います。コンピュータグラフィックの達人なら,3次元の立体図による3変数のグラフ化も可能なのでしょうが,私にはまだ,そこまでのテクはありません。

2017年3月21日火曜日

モノを考えなくなる労働者

 昨日の福井新聞に,「パワハラや過労,企業存続を左右 過去の発想では人材集まらない」という記事が出ています。
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/society/117528.html

 昔なら,しごきに耐え,長時間労働も厭わない労働者は集まったのでしょうが,最近はそうはいきません。今の学生が会社を選ぶ基準は,給与や知名度から,残業のなさや有休が取りやすいことといった「働きやすさ」にシフトしてきています。

 これは随所で言われていることですが,上記の記事にとてもいいことが書いてありますので,引用させていただきましょう。

 「長時間労働で疲弊した人は新聞を読む気力もなく,物事を深く考えなくなる。少しの情報だけで自分の意見を決める。それが世論になってしまう。欧州では家族で食事をとりながら会話をしたり,広場やカフェで自由に議論をしたりする。時間に余裕があるかどうかは,民主主義の成熟と深く関わっている可能性がある」。(福井新聞,2017年3月20日)

 そうですねえ。日々の仕事で精一杯で,知の肥やしを得ることができなくなります。この記事では新聞に触れられていますが,国民の読書の頻度も減ってきている。とくに,働き盛りの年齢層においてです。

 下のグラフは,過去1年間に,自発的な趣味としての読書をした人の割合の年齢カーブです。2001年と2011年の曲線が描かれています。


 どの年齢層も,この10年間で読書の実施率が下がっています。この中には電子書籍による読書は含まれるでしょうから,スマホなどの危機の普及が原因ではありません。電子書籍を含め,書物を手に取る人間が減ってきている,ということです。

 グラフから分かるように,それはとくに働き盛りの層で顕著です。2本の曲線の落差が大きくなっています。私の年齢層(40代前半)では,54.4%から45.7%へと,10ポイント近くの低下です。

 バリバリの働き盛りですが,おそらくは長時間労働ゆえに,書を手に取るゆとりがなくなっているのでしょう。人手不足が影響しているのか,この10年間で平均仕事時間も増えています。

 2011年のデータによると,40代前半の男性有業者の平均仕事時間は,平日1日あたり10時間を超えます。また,35~44歳の男性有業者の5人に1人が,1日12時間以上働いています。
https://twitter.com/tmaita77/status/843793188515078144
https://twitter.com/tmaita77/status/843774234740441088

 加えて,育児と介護がかさなる「ダブルケア」の問題も出てきているのでしょう。晩婚化の進行により,この年齢層でも,手のかかる幼子がいる親御さんはたくさんいますし。それでいて,老親の介護ものしかかってくる。

 ちなみに今世紀以降,国民の読書実施率マップの色も,全体的に薄くなってきています。以下に掲げるのは,10歳以上の県民のうち,趣味としての読書を過去1年間にした者の割合の都道府県地図です。


 全国的に「知の剥奪」が進行している,といったら言い過ぎでしょうか。都市部で相対的に率が高いのは,書店や大きな図書館が多いためでしょう。

 国を挙げて,読書活動推進に向けた取組がされていますが,現実はかくのごとし。とりわけ働き盛りの層でこの傾向が顕著なことから,モノ言わぬ労働者の増殖が進んでいることの数値的な表現といえるかもしれません。この上に,やりたい放題のブラック企業も蔓延ることになります。

 ある程度の分量(深み)のある本を読まず,スマホでネットニュースの短いタイトル(リード文)をみて,それだけで自分の考えを決めてしまう。モノを深く考えない国民の増殖。恐ろしいことです,

 最近,暴行犯の激増に象徴されるように,キレる国民が増えているといいますが,腰を据えて本を読まない人が増えていることとも関連しているような気がします。本を読まない子どもは,人の話を長く聞けない,キレやすい,という論文を読んだことがありますが,確かに頷けます。私なども,気を付けないといけないのですが。

 政治の右傾化も,こうした土壌の上に蔓延りやすいことは,言うまでもないことです。

2017年3月18日土曜日

都道府県別の通勤・仕事時間

 今日は一日中,室内で肉体労働をしました。昨日届いたスチール本棚5台を組み立て,梱包の巨大段ボールを解体して束ねる。そして,台所に山積みにしておいた本を並べる作業です。


 学生の頃から使っていた木製の本棚3台は,引っ越し前に処分しました。無理に詰め込んだため,棚がひん曲がってしまったためです。これが木製の欠点。それに対し,スチールは耐性に優れています。組み立ても超簡単です。
http://tanabe.tank.jp/cool2/sutiruhondana-top.htm

 うーん,やはり本に囲まれると落ち着きますねえ。仕事をしようという意欲も湧いてきます。子どもの読書活動推進の取組が盛んですが,こんなふうに子どもを本で取り囲んでしまう環境を作るのもいいでしょう。詰める本は,図書館からフルに借りてくる,ブックオフの100円文庫を大量に買い込むなど,いろいろ揃える手はあります。

 さて,有業者の平均仕事時間を出した記事をツイッターで見かけました。それによると,トップはわが神奈川県で1日495分とのこと。これは平日なのか,週全体でみた平均なのか分かりませんが,神奈川県民としてはちょっと複雑な思いです。
https://twitter.com/hahaguma/status/842925983975931904

 この記事で紹介されているのは,全有業者の平均みたいですが,働き盛りの男性に限るとどうでしょう。また,仕事時間に通勤時間も加味すると,大変さの度合いがもっとリアルに正確に出てくると思います。

 私は,2011年の『社会生活基本調査』に当たって,35~44歳の男性有業者のデータを作ってみました。バリバリの働き盛りです。この層に限定して,平日1日あたりの平均通勤時間と平均仕事時間を県別に出してみました。ここでいう平均時間とは,調査日に当該の行動をした行動者の平均時間です。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/index.htm

 通勤時間(a),仕事時間(b),両者の合算(a+b)を高い順に並べたランキング表にすると,以下のようになります。


 通勤時間のトップは神奈川です。1日あたり(往復)106分,片道53分ですか。私が住んでいる横須賀市から都内に通勤するとなると,もっとかかるだろうな。その次が埼玉,3位が千葉と,東京を取り巻く3県が上位を占めています。さもありなん。

 仕事時間をみると順位構造は違っていて,上位には地方県が多く挙がっています。トップは岐阜の638分(10時間38分)です。地方は都会に比して仕事時間が短い,という記事を見たことがありますが,働き盛りの男性に限ると,必ずしもそうではないようです。意外にも,神奈川の平均仕事時間は全国値より短いではないですか。

 右端は両者を足し合わせた「通勤・仕事時間」で,大変さのレベルを測る指標としては,これがいいでしょう。トップは千葉で714分(11時間54分)! この県では,働き盛りのオトコは,1日の半分を電車内かオフィスで過ごすと。神奈川は仕事時間が短いので,これらの群からは外れています。

 しかし,秋田はいいですねえ。3つの指標とも名誉の最下位。本県の35~44歳男性の通勤・仕事時間は599分で,トップの千葉よりも2時間近く短くなっています。この年齢層の多くは子どもがいるパパでしょうが,わが子と接する時間も多く取れるでしょう。秋田は子どもの学力トップの県ですが,親世代の生活が落ち着いていることも影響しているのでは。こういう部分も投影されるものです。

 当然,通勤・仕事時間(a+b)が長い県では,睡眠時間は短い傾向にあります。下図は,上表の右端のデータと平均睡眠時間の相関図です。


 相関係数は,-0.8097にもなります。右下の都市県はキツイ。仕事時間が最長の岐阜も,この群に仲間入りしています。岐阜はいったい,何なんだろうなあ。

 有業者全体ではなく,働き盛りの男性に限ると,われわれが肌で感じていることが統計で鮮やかに可視化されるように思います。

2017年3月16日木曜日

真正待機児童数の推定

 今年も,全国各地で認可保育所落選の悲鳴が上がりました。今はSNSがありますので,こういう声がたちどころに伝わってきます。

 認可保育所への入所を希望しつつも入れないでいる乳幼児が,いわゆる「待機児童」ですが,当局の定義が実態を拾えてないことはよく指摘されます。悪条件の認可外保育所に入れている児童は,その中には含まれないなど。

 0~5歳の乳幼児人口から認可保育所在所児数を引くと,認可保育所在所児数が出てきます。幼稚園児,認可外保育所在所児,あるいは在宅保育児ですが,この中の何%くらいが真正の待機児童でしょうか。

 公的統計によると,2014年10月時点の0~5歳人口は627万4400人(総務省『人口推計年報』)。同時点の認可保育所在所児は223万552人です(厚労省『社会福祉施設等調査』)。よって,認可保育所に在所していない乳幼児は404万3848人となります。

 そうですねえ。このうちの1割(10%)が真正の待機児童と仮定すると,404万3848人×0.1=40万4385人という数になります。厚労省発表の2014年4月1日時点の待機児童数は2万1371人。むうう,ケタが違っています。

 10%というのは多すぎでしょうか。しからば5%,1%とすると,真正の待機児童数は以下のように見積もられます。

 5%の場合 ・・・ 404万3848人×0.05= 20万2192人
 1%の場合 ・・・ 404万3848人×0.01= 4万438人

 これでも,当局発表の待機児童数(2万1371人)を大きく上回っています。認可保育所在所児の5%が真正待機児童と見積もってもいいように思いますが,いかがでしょうか?

 これは全国の推定値ですが,47都道府県別に同じ計算をすることができます。認可保育所在所児(0~5歳人口から認可保育所在所児数を引いた数)の10%,5%,1%が真正待機児童と仮定した場合の推定値を,都道府県別に出してみました。


 どの県も,真正待機児童数の推定値は,当局の公表数よりもかなり多くなっています。「待機児童ゼロだぜ!」と威張っている県も,実態はそうでなかったりする。

 上表のデータは資料として見ていただければと思いますが,待機児童の把握漏れの度合いを測る指標を県ごとに計算してみましょう。計算式は以下です。

 把握漏れ率=(真正待機児童数-当局発表の待機児童数)/0~5歳人口

 真正待機児童数は3パターン出しましたが,中間の5%仮定の数値を使いましょうか。この場合,東京の待機児童の把握漏れ率は,(22076-8672)/630400=2.126%となります。

 この指標を都道府県別に計算し,ランキングにすると以下のごとし。


 埼玉や神奈川では,待機児童の把握漏れが相対的に多いようですね。保育所不足が深刻化している県ですが,保育ニーズも十分に拾えていない。

 逆に相対的に優良なのは沖縄で,真正待機児童の推定数と当局公表の待機児童数の差が小さくなっています。

 いろいろ抜けが多い現行の待機児童数に安堵し,何もしない自治体に喝を入れる意味でも,こういう指標の試算は無駄ではありますまい。今回のデータは2014年のものでちょっと古いですが,興味を持たれた方は,最新のデータで同じ作業をなさってみてください。

 各自治体の関係者の参考にもなるでしょう。

2017年3月13日月曜日

自動車学校の苦境

 18歳人口の減少で大学は苦境に立たされていますが,同じく若者を顧客とする自動車学校も大変みたいです。何とか生徒を呼び込もうと,食堂を食べ放題にしたり,カラオケなどのアミューズメント施設を設けたりする教習所もあるとのこと。

 自動車学校は,学校教育法でいう各種学校に該当し,入学者数の長期推移を文科省『学校基本調査』にて知ることができます。私は,同資料のバックナンバーに当たって,1980年から2016年までの変化を跡付けてみました。ついでに,同じく各種学校に分類される予備校の入学者数の推移も明らかにしてみました。

 以下に,数値の表を掲げます。需要層とは,これらの学校の主な顧客である15~24歳人口のことです。


 自動車学校の入学者は,1980年では4万6千人ほどでしたが,2016年現在では1万600人ほどに減っています。この36年間で,およそ4分の1に減ってしまいました。予備校は減少のスピードがもっと速く,9分の1にまで減っています。

 少子化により若年人口が減っているためでしょうが,需要層に占める入学者の比も,低下の一途をたどっています(右欄)。若者のクルマ離れ,予備校離れもあるでしょうね。下のグラフをみても,これらの学校の入学者減少のスピードは,需要層のそれよりも速くなっています。


 若年層だけを顧客に据えているようでは,今後は生き残りは難しいでしょう。最近は,大学受験の予備校が公務員試験予備校に鞍替えするなど,柔軟な措置がとられているようですが。

 自動車学校も,高齢ドライバーの再教習の機能に力点を置くべきではないでしょうか。現在の形式的な免許更新制を改め,70歳になったら免許を取り上げ,希望者はもう一度取得してもらうと。

 昨日,新居の近くを自転車で走っていたら,自動車に接触され転倒しました。原因は相手の前方不注意。幸いケガはなく物損事故という記録になりましたが,一歩間違えば惨事になっていたところです。

 事故処理をしてもらった警察官がいうには,「東京と違って,この辺りは高齢ドライバーが多いので,自動車を見かけたら,止まってくれるとは思わないほうがいい」とのこと。平たく言えば,「ブレーキがついていると思うな」ってことです。

 上述のように,70歳になったら「一から取り直し」の制度にすれば,免許返納以上の効果が得られると思うのですが,どうですかねえ。むろん多大な労力がかかりますが,若年の顧客が減って困っている自動車学校の協力を仰ぐということで。

 少子高齢化が進む日本では,教育の顧客もチェンジしないといけないでしょう。昨日,ちょっとした交通事故に遭って,こういうことを思いました。