2016年8月28日日曜日

世界の富の偏り

 矢野恒太郎記念会『世界国勢図会』の最新版が届きました。毎年,教員採用試験・中高社会の要点整理集のデータ更新に使わせていただいております。


 しかし,用途はそれだけではありません。いろいろな国際比較のデータが満載ですので,とても重宝します。『日本国勢図会』と並んで,データウォッチャーにとって,手元に置いておくべき資料といえましょう。毎年,このような貴重なデータ集を刊行してくださる,財団法人・矢野恒太郎記念会に敬意を表します。

 パラパラと眺めたところ,23ページに「おお」というデータが載っています。人口と所得の分布です。世界銀行の分類により,各国を低所得国,中所得国(下位),中所得国(上位),高所得国に分け,この4群の人口と国民総所得の配分比をとったデータです。


 2014年の統計ですが,人口では全体の2割ほどでしかない高所得国が,世界全体の所得(富)の7割近くをも占有しています。スゴイ偏りです。

 南北問題に象徴されるように,産出される富の量に著しい国際差があるのはよく知られていますが,上図はその可視化です。

 これだけでも富の配分の偏り(不平等)は明白ですが,その程度を数値で表してみましょう。不平等の度合いを測るには,ジニ係数が一番です。下準備として,以下の表を作ります。


 相対度数は,最初のグラフの構成比そのままです。ここでは,全体が1.0になるように換算します。右側の累積相対度数は,下から積み上げたものです。

 これによると,人口では8割を占める,高所得国以外の国には,世界全体の富の3割ちょっとしか届いていません。逆にいうと,残りの7割の富は高所得国に持っていかれているわけです。

 ジニ係数を出すには,ローレンツ曲線を描くのでしたよね。右欄の累積相対度数をグラフにしたものです。横軸に人口,縦軸に所得(富)の累積相対度数をとった座標上に,4つの群のドットを置き,線でつなぎます。


 この曲線の底が深いほど,人口と富の分布のズレが大きいこと,すなわち富の配分の偏りが大きいことを示唆します。

 ここで求めようとしているジニ係数は,図中の色付きの面積を2倍した値です。富の偏りが全くない,人口分布と富量分布が等しい場合,ローレンツ曲線は対角線と重なりますので,ジニ係数は0.0となります。逆に,極限の不平等状態の場合,色付きの面積は四角形の半分(0.5)になりますから,ジニ係数はこれを2倍して1.0となる次第です。

 よってジニ係数は0.0~1.0の値をとることになります。1.0に近いほど,不平等の度合いが大きい,ということです。

 さて,上図の色付きの面積は0.2915となります(面積の求め方は,下記リンク先記事を参照)。よってジニ係数は,これを2倍して0.5830となります。

 現在の世界における富の国際的偏りは,ジニ係数0.5830という数値で可視化されました。先進国から途上国への援助は増えていますし,昔に比したら,この値は下がっていることでしょう。80年代頃までは,0.8くらいあったかもしれません。

 しかし0.5830という数値も,絶対水準では高いと判断されます。持てる国と持たざる国の格差は大きい。われわれは日本人であると同時に,世界市民です。世界規模の貧困・格差の問題を「対岸の火事」とみるのではなく,自らの問題としてとらえる構えが求められるでしょう。持続可能な社会のための教育(ESD)は,そういう人間を育成する実践の総体に他なりません。

 崇高なことを書きましたが,今回のデータは,ジニ係数を教えるにあたっての分かりやすい教材になるかなと思い,実際に係数を出してみました。

 「ジニ係数の計算方法を教えてください」という質問をよく受けますが,時間がないときは,「このブログの記事をみてちょうだい」と言えるので,こういう形にしておくと便利です。

2016年8月27日土曜日

劣悪な労働条件による離職

 労働者の離職理由には,さまざまなものがあります。前に,ニューズウィーク記事にて,正社員の離職理由の内訳を年齢別に示した図を紹介したことがありますが,ライフステージごとの色が実に出ています。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2015/09/post-3920.php

 若者で最も多いのは,「労働条件が悪かった」という理由です。若者を使いつぶすブラック企業がはびこっている状況を思うと,さもありなん。今回は,この部分に焦点を当て,データをちょっと掘り下げてみようと思います。

 まず,この理由による離職者は,数でみてどれほどいるか。2012年の『就業構造基本調査』によると,2011年10月から2012年9月の1年間において,「労働条件が悪かった」という理由で離職した正規職員は28万9千人となっています(20~50代)。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 性別・年齢層別にみると,下図のようです。


 若者ほど多く,ピークは20代後半となっています。ブラック労働の餌食になるのは,やはり若者が多いようです。

 それにしても,劣悪な労働条件に耐えかねて離職する20代の正社員が,1年間で12万7千人もいることに驚かされます。私が住んでいる多摩市の人口に匹敵する規模です。

 あと一つ,地域別のデータにも驚愕させられます。劣悪な労働条件による若者の離職率が高い県はどこか。県別のデータを計算したところ,クリアーな地域性が出てきました。

 私が計算したのは,25~34歳男性有業者の離職率です。正社員だけの統計は県別には得られませんので,有業者全体としています。まあ男性ですので,大半が正社員とみてよいでしょう。

 2011年10月から2012年9月における,劣悪な労働条件による,25~34歳の男性有業者の離職者は10万6200人(①)。分母には,観察期間の始点の2011年10月時点の有業者数を充てたいのですが,それは得られないので,翌年(2012年)の10月時点のそれで代替します。その数,680万3600人(②)。

 よって離職率は,①/②=15.61‰となる次第です。(パーミル)とは,千人あたりという意味です。

 これは全国値ですが,同じ値を都道府県別に計算し,高い順に並べたランキングにすると,下表のようになります。


 劣悪な労働条件という理由による,若年男性の離職率です。トップは,わが郷里の鹿児島。2位は大阪で,3~6位は九州の県が続きます。九州,ヤバいですね。

 地域性が明瞭であることをお知りいただくため,上記のデータをマップにしましょう。3段階の階級を設け,各県を塗り分けてみました。


 南九州が濃い色になっていますが,このゾーンでは,ブラック労働に苦しむ若者が多いのか。

 こうした地域性が出る理由は思いつきませんが,ツイッターでこのマップを発信したところ,①男尊女卑の風潮と関連しているのではないか,②薩摩は琉球に対する搾取をしてきた歴史的経緯があるが,その土壌が今も生きているのではないか,といった意見が寄せられました。②などは,ユニークですね。
https://twitter.com/gwinjacket/status/768755339080589312

 今回のデータは,各地域の労働行政の参考にもなるかと思いますので,資料として提示しておきたいと思います。

2016年8月24日水曜日

伊豆の城ケ崎海岸

 歯痛もあってか,最近,ちょっと生活が乱れています。夜型になりつつあり,今日の午前深夜も眠れず,八雲星次さんの『職業治験』をキンドルで読んでました。
https://twitter.com/tmaita77/status/768150685003112452

 朝型に戻さないといけない。そのためには,昼寝てはいけない。でも家にいると,眠気がさしたら,つい布団に入ってしまう。しからば,どこかに出かければいい。天気もいいので,そうしました。行先は,伊豆の城ケ崎海岸です。

 新百合ヶ丘始発(8:10)のロマンスカーで小田原に行き,JRで熱海へ。そこから伊豆急で城ヶ崎海岸駅まで下りました。伊豆高原駅の一つ手前です。

 タクシーを呼んで,「ぼら納屋」という有名な食事処に行き,金目鯛の丼を食しました。値は張りましたが,実に美味かった。
http://www.boranaya.com/

 その後,海岸ピクニカルコースをたどり,有名な門脇吊り橋へ。高さ23メートル,結構怖かった。


 でも,見晴らしは最高。橋の上で,シャッターを押すこと数回。上は遠景,下は橋の真下の澄んだ海です。


 その後,ピクニカルコースをさらに下り,伊豆海洋公園へ。名物のマンゴージュースを飲んで休憩。13:35のバスで伊豆高原駅に出て,そこから行きと同じルートで帰ってきました。

 定番のコースをなぞっただけですが,海を見ると,心が広々としていいです。前にも書きましたが,「海の見える街」に住みたい。移住もちょっと考えていますが,まあ今の住所(多摩市)からも,電車にちょっと乗れば海に出れるので(最も近いのは江の島),現段階では思いとどまっています。

 最後に,空と海が触れ合う遠景を一枚。壮大ですねえ。


 今日の遠足の記録です。今夜はぐっすり寝て,生活を立て直したいと思います。

2016年8月20日土曜日

都内23区の生活習慣病死亡率の推計

 昨日,ツイッターにて,都内23区の生活習慣病死亡率のデータを発信しました。各区の経済力(年収)と強く相関しているというもので,見てくださる方が多かったようです。
https://twitter.com/tmaita77/status/766571255604490240

 しかるに,各区の年齢構成の影響を考慮する必要があるのではないか,という声が多数でした。なるほど,生活習慣病(がん,心臓病,脳梗塞)の死亡率は,年齢によって大きく異なっています。下表は,東京都の年齢層別の生活習慣病死亡率です。


 ご覧のように,生活習慣病の死亡率は,年齢を上がるとともに指数関数的に増加していきます。そうである以上,地域別の生活習慣病死亡率を見る際は,年齢構成の違いも考慮しなければなりますまい。

 といっても,年齢層別の生活習慣病死亡者数を,地域別に知ることはできません。そこで私は,都全体の年齢層別の死亡率(上表)を使って,23区の生活習慣病死亡率の期待値(推計値)を出し,それを実測値と照合してみることにしました。

 生活習慣病の死亡率が,年齢構成からした期待値よりも高いならば,問題であることになります。私は,上表の年齢層別の死亡率を,各区の年齢構成でウェイトづけして,生活習慣病死亡率の期待値を出してみました。

 たとえば,足立区の日本人住民の年齢構成は,0~4歳が4.14%,5~9歳が4.03%,・・・95~99歳が0.16%,100歳以上が0.02%です(2014年1月1日時点)。これを,上表の年齢層別死亡率に乗じて重みづけして,死亡率の期待値を出すと,以下のようになります。

 {(0.32×4.14)+(0.26×4.03)+・・・(939.48×0.16)+(1158.77×0.02)}/100.00=47.61

 年齢構成から期待される,2014年の足立区の生活習慣病死亡率(住民1万人あたりの死亡者数)は47.61です。しかるに,実際の生活習慣病死亡率(2014年中の死亡者数/同年1月1日の日本人人口)は54.56です。

 足立区は,年齢構成から予測される死亡率よりも,実際の死亡率が高くなっています。貧困による食習慣の乱れなどの因子が影響しているのでしょう。

 私はこのやり方で,都内23区の生活習慣病死亡率の期待値(推計値)を出し,実際の死亡率(実測値)と照合しました。下表は,その一覧表です。


 実測値が推計値を上回っている区もあれば,その逆も区もあります。

 足立区,江戸川区,荒川区,台東区は,年齢構成から期待される死亡率よりも,実際の死亡率が5ポイント以上高くなってしまっています。

 逆に,文京区,目黒区,世田谷区,杉並区は,実際の死亡率が理論値よりも5ポイント以上低し。行政にとって,誇ってよいことです。

 しかるに,上表の結果は,各区の健康増進に関わる施策よりも,住民の階層構成のような基底的要因と強く関連しているとみられます。たとえば,上表の生活習慣病死亡率の残差を,各区の平均世帯年収(2013年)と関連付けてみると,下表のようになります。


 年収が高い区ほど,生活習慣病の死亡率が,年齢構成からした期待値よりも低い傾向がみられます。年収が低い区は,その反対です。

 富裕層は健康管理や食習慣に気を遣い,病院にも足繁く通う。貧困層はその逆。上図は,経済力とリンクした「健康格差」現象のマクロ的な表現であるともいえましょう。

 各区の生活習慣病死亡率の年齢調整値は出せませんけど,今回のような残差分析(実測値-推計値)から,住民の健康に影響する地域の要因の存在は指摘できるかと思います。

 年齢構成からした期待値と実測値の照合。こういうデータにも,各区の健康行政の関係者は関心を払うべきかと存じます。

2016年8月18日木曜日

女性からの校長輩出率(都道府県別)

 帯状疱疹が治ったと思ったら,今度は歯痛に苦しんでいます。2年前に神経を抜いた左奥歯の根に膿ができているとのこと。現在,抗生物質を投与して様子見です。

 昨日までは激痛でしたが,やっと抗生物質が効いてきて,ちょっと落ち着いてきました。ブログを何日も放置するのは気分がよくないので,手元にあるネタで記事を書くことにします。

 前々回は,女性が校長になれるチャンスの国際比較をしました。校長の女性比と全教員のそれを照合して,輩出率という指標を計算しました。結果は,日本は最下位。女性から校長が最も出にくい社会です。

 この指標は,国内の時代別・地域別にも出すことができます。教員(校長)の女性比率は,『学校基本調査』からすぐに計算できますので。国内のデータなんていじっても面白くなかろうと思っていましたが,率を出してみると,時代変化や地域差が結構あることに驚きました。ここにて,紹介する価値もあると判断します。

 まずは,時代変化をみてみましょう。男女雇用機会均等法が制定されたのは80年代半ばですが,それより前の時代と現在を比べてみます。私は,1980年と2015年現在について,公立学校の女性校長輩出率を計算しました。

 女性校長輩出率とは,校長の女性比率を,全教員のそれで除した値です。2015年のデータでいうと,公立小学校校長の女性比は19.1%,全教員のそれは62.6%ですので,女性からの校長輩出率は0.305となります。男女に平等にチャンスが開かれている場合は,この値は1.0になりますが,現実はその3分の1であると。

 これは2015年の公立小学校の数値ですが,中高はどうでしょう。また昔はどうか。下表は,結果の一覧表です。


 さすがに,昔に比したら数値は上がっています。35年前では女性校長はほとんどいなかったのですね。比率もさることながら,実数をみても驚かされます。1980年の公立中学校の女性校長は12人,公立高校は6人です(全国で!)。

 しかしそれ以降,男女雇用機会均等法(1985年)や男女共同参画社会基本法(99年)などの法律もでき,女性の社会進出を促す取り組みが進められてきました。指導者層の女性比を増やそうという政策も,よく見られます。それゆえか,学校のトップの女性割合も高まり,ベースを勘案した女性輩出率も上がってきています。

 これは誇っていいことですが,絶対水準はまだまだ低い。先に記したように,校長になるチャンスが男女で平等ならば上表の輩出率は1.0になるはずですが,現実はさにあらず。女性が校長になれるチャンスは,小学校は男性の3分の1,中学校は7分の1,高校は5分の1という有様です。他国と比しても,わが国の女性からの校長輩出率が低いことは,前々回の記事でみた通り。

 なお,この指標は国内の地域によっても違っています。国内の地域比較なんて「どんぐりの背比べ」だろうと思っていましたが,47都道府県の値を出してみると,結構なバリエーションがみられます。

 たとえば2015年の公立小学校でいうと,女性からの校長輩出率は,最高の0.6361(石川)から最低の0.0728(山梨)まで分布しています。女性が校長になれるチャンスは,前者は後者の9倍近くです。

 2015年現在における,女性校長輩出率の都道府県ランキングをみていただきましょう。


 小学校と高校のトップは石川,中学校のトップは神奈川です。この2県は,女性が校長になれるチャンスが相対的に高い。アファーマティブ・アクションのようなことをしているのでしょうか。

 一方,中部の山梨は芳しくない。郷里の鹿児島も,小学校は下から2位です。高校をみると,島根の率は0.0,つまり女性校長ゼロです。何もしないでこうなるならば,人為的なテコ入れ,アファーマティブ・アクションも求められるでしょう。

 あなたの県は,どの辺りですか。資料として,見ていただけたらと思います。ランキングは競争を煽る,レッテル貼りになるなど,否定的な意味合いで取られることが多いのですが,そればかりではありますまい。

 学校の指導者層の属性を多様化しようと,各地域が競うのは結構であり,その集積によって現場もよくなります。それを促すのが,上記のようなデータの公表です。既存統計をちょっといじれば,こういうデータもすぐに出せる,ということをお知りいただきたいと思います。

2016年8月14日日曜日

東京湾フェリーに乗る

 今日も遠足に行ってきました。

 お昼前に,二郎・亀戸店で汁なしを食しました。トッピングは,ニンニクマシマシ。恰幅のいい店主さんが,ドサッと入れてくれました。これくらい入れてくださると,ありがたい。


 しかし,昨日の夜から少しズキズキしていた左奥歯(2年前に抜髄)が痛くなってきて,噛めない事態に。泣く泣く,5分の1ほど残してしまいました。ゴメンナサイ。

 その後,総武線快速(G車)で君津まで行き,内房線の普通(1時間に1本)に乗り継いで,浜金谷へ。駅から10分ほど歩くと,東京湾フェリーが出る浜谷港があります。

 東京湾フェリーは,浜谷港(千葉)と久里浜港(神奈川)を40分ほどで結ぶ航路です。これを機に,乗ってみることにしました。片道720円なり。

 写真を3枚。上は切符,中は遠ざかる浜谷港(千葉側),下は船上から臨む三浦半島(神奈川)です。


 夕刻は,沈む夕日が絶景だそうです。3枚目の写真が,鮮やかな黄金色に染まることでしょう。会社のHPにて,何時の便でそれが拝めるか紹介されていますので,時刻を見計らっていくとよいでしょう。富士山もくっきりして,ダイヤモンド富士が拝めるかも。

 久里浜港に着いたら,京急バスで京急久里浜駅に出て,そこから京急快特で横浜まで。あとは,横浜線と小田急で帰ってきました。

 先日の三崎めぐりがよかったので,また気晴らしにと出かけたのですが,今日は疲労になってしまったかな。左奥歯のズキズキもひどい。行きつけの歯医者さんは盆休みなので,買ってきた市販の鎮痛剤(ロキソニン)でしのぐしかありません。

 やれやれ,帯状疱疹が治ったと思ったら,今度は歯痛です。40になって,体のあちこちにガタがきています。6月初頭には,ギックリ腰にもなりましたしね。

 かといって,家に閉じこもっているばかりではよくない。今月の22~26日の締め切りラッシュを乗り切ったら,今度は伊豆の城ケ崎にでも足を延ばそうと思っています。有名なつり橋を渡ってみたいのです。

追伸:
 今日の北海道新聞にて,子どもの自殺についてちょっとコメントしております。ご覧くださいませ。7月28日の日経デュアル記事でも主張したことです。
http://dd.hokkaido-np.co.jp/lifestyle/education/2-0072833.html
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=8851

2016年8月13日土曜日

女性・若年からの校長輩出率

 教員にはいろいろな職階がありますが,そのトップは校長です。

 校長は「校務をつかさどり,所属職員を監督する」ほか,職員会議を主宰するなど,それなりの権限を持っています。政策文書でも,「校長のリーダーシップ」という文言をよく見かけますが,学校運営の成否は,リーダーの校長の手腕にかかっているといっても過言ではありません。

 その校長ですが,どういう属性の人がなっているのでしょう。私の小・中・高をふりかえると,朝礼でありがたい講話をしてくださったのは,一貫して,白髪のおじいさんばかりでした。全国的にても,校長先生は,たいがい高齢の男性でしょう。

 国際教員調査(TALIS 2013)のデータにて,日本の中学校校長の属性をみると,女性比や若年比はとても低くなっています。女性比は6.1%,若年(50歳未満)比は1.5%です。

 しかし国際標準からしたらこれは特異で,世界を見渡すと,どっちの指標も4割くらいの国が多くなっています。南米のブラジルにいたっては,女性比は72.1%,若年比は67.1%です。両指標のマトリクスに各国を配置したグラフは,昨日ツイッターで発信しました。「日本の校長は,オヤジばっか」です。
https://twitter.com/tmaita77/status/764105003715792897

 しかるに,各国の校長の属性は,教員全体のそれを反映しています。ブラジルの校長の女性比や若年比が高いのは,中学校教員全体のそれが高いからです。そこで,ベースの構成を考慮して,女性や若手からの校長輩出チャンスを数値化してみましょう。

 私は,中学校教員(校長除く)と中学校校長の女性比,若年比を国ごとに計算しました。そして,以下の操作をすることで,女性や若年層(50歳未満)から校長が出る確率を出してみました。
http://nces.ed.gov/surveys/international/ide/

 中学校校長の女性比(若年比)/中学校教員の女性比(若年比)

 簡単にいうと,校長での女性比(若年比)を,教員全体のそれと照合し,割り算をしたわけです。くだくだ口で説明するより,計算表をみていただいたほうが早いでしょう。


 日本では,中学校教員(校長除く)の女性比は39.0%ですが,校長では女性は6.1%しかいません。よって,女性からの校長輩出率は,6.1/39.0=0.156 という数値で測られます。若手(50歳未満)からの輩出率はもっと低く,たったの0.022です。

 お隣の儒教社会・韓国では,50歳未満の校長はゼロですので,輩出率もゼロとなっています。

 アジアの2国はこうですが,世界を見渡すと,高い値がちらほら見られます。ブラジルの女性校長輩出率は1.0を超えています。教員全体の女性比より,校長でのそれが高い。つまり,男性よりも女性のほうが校長になりやすい,ということです。アラブ首長国連邦もそう。これらの国では,「教員は女性の仕事」という考えがあるのかもしれませんが,このような社会もあるのですね。

 若手からの校長輩出率のマックスは,アメリカの0.868です。さすが「チャンス」の国。年齢に関係なく,有能な教員はトップに昇格できるようです。「校長試験の受験はまだ早い」などと,年齢を理由に引き止める日本とは大違いですな。

 女性・若年からの校長輩出率をグラフにしましょう。横軸に女性,縦軸に若年(50歳未満)からの校長輩出率をとった座標上に,35国を配置すると,下図のようになります。


 日本と韓国の外れっぷりがスゴイこと。女性や若手が,トップになりにくい社会の典型です。男性優位,年功序列の風潮がはっきりと表れています。

 どの集団であれ,成員の属性があまりに偏るのは,好ましくないといいます。どの自治体にも「**校長会」という組織があり,教育施策の決定に際して大きな影響力を持っていますが,そのメンバーが高齢男性だらけというのは考えものでしょう。

 トップの属性は多様化したほうがいい。まあ,昔に比したら事態は幾分かマシになっているのでしょうが,国内の時系列や地域別の差なんて「どんぐりの背比べ」で,国際的にみたら,上記のような惨憺たる様です。

 今回のデータをエビデンスにして,学校のトップの登用の在り方について,一考をめぐらすのもよいかと思います。